★小説★

□An amusement park
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すげぇ行列・・・。
俺の片手には紙切れ数枚。
豪華商品があたるかもしれない紙きれを持って来たが・・・。
これは燃えるゴミ行き決定だな。
正直これに並ぶつもりは・・・ない・・・。
無駄足だった。
ため息と一緒に暑さのせいで汗が首を伝う。
人間の体温調節によって発汗されたものを拭うと声をかけられた。



「おー!沖田くんじゃないか!」


「・・・旦那・・・。」




列の最後尾にいるのは見慣れた銀髪。



「なになに?沖田くんも福引やりにきたの?」


「そのつもりだったんですけどねィ。こんなに並んでるんなら諦めまさァ。券が溜まっちまったから来たってだけだし」


「え、マジで?じゃその手に持ってるものもしかして不要だったりする?」


「えぇ、まぁ・・・。」


「じゃ俺にくれ!」


「いいですぜェ。その代わり今度俺の練習台になってくだせェ。」


「・・・なんの?」


「バズーカの。」


「おまッ!!俺を的に練習するつもりかァァァ!!俺の命と福引券どっちが大事かよく考えてみろ!」


「・・・」


「え・・・あの・・・。考える必要ないよね?もちろん銀さんの命だよね?」


「ははッ。面白いですねィ、旦那。冗談でさァ。はい、コレ。」





俺が旦那をからかってる間に列は少しずつ動いていて、いつの間にか並んでるつもりのなかった俺の後ろにも人がいた。




「あ、やっぱ沖田くんがやれば?俺くじ運悪ィんだよ・・・。」



さっさと渡して帰ろうと思い、旦那に券を渡そうとしたら言われた一言。
前を見ればあと少しで自分の番が回ってくる。




「まぁここまで来たんだし、やっていきましょうかねェ・・・。」


「良いのが当たったら俺にくれよな!」


「嫌でさァ」




小さな福引券で自分を扇ぐと微風だが風を感じる。
幾分かの涼しさを肌に受け止め、順番が回ってくるのを旦那と待つ時間は長いようで短かった。
次は旦那の番だった。




「俺遊園地のチケット欲しいんだよね。あ、俺は興味ないよ?もちろん。大人の遊園地しか興味ないからね。でもウチのガキ連中が五月蝿くてよー。」


「へ〜。じゃ頑張ってくだせェ」


旦那がいよいよやろうとしたとき俺にそう話したのは、きっと俺がもしそれを引いたら譲ってくれ。という意味も含まれているのだろう。




「いくぜェェェ!」


ガラガラと中にある色つきのたまが音をたてる。
旦那が激しく回すからなかな出てこない。



「旦那、もうちょっとゆっくり回さないと。」


「あ、そか。」



俺の助言を素直に聞き、回す手の力を抜く旦那。

コロ・・・ン・・・。


「はーい、残念でしたー!参加賞のティッシュでーす!次の方どうぞー」



虚しくも出てきたのは真っ白なもの。
そして渡されたものも真っ白なもの。



「残念でしたねィ、旦那。」


「沖田くん!頼むよ!俺のために遊園地のチケットを・・・!」


「俺のためにやるんでィ、旦那は黙っててくだせェ」


泣きながら懇願してくる旦那。
早速貰ったティッシュで涙を拭いている。



カラ・・・カラ・・・。


適当に回す。
何色がでてもいいと思ったから。

コロ・・・ン・・・。



「おぉー!出ました!本日初の当たり玉!三等の遊園地ペアチケットです!おめでとうございます!これどうぞ!」


「え・・・、マジですかィ?」


「なんで沖田くんがァ!?」



五月蝿く当たりだと告げる声と嘆く声が合体して両耳を刺激してくる。
白い封筒の中にはチケットが入っていた。
並んでる人間からも「いいなー」やら「これでしばらく当たりはでねぇんじゃねぇか?」と言われ自分ってくじ運よかったっけ?と自問してみる。



「旦那んとこのチャイナが行きたがってたんでしたっけ?」


「あぁ、まぁな。新八はついでみたいな感じだったからな。進んで行きたがってはいなかった気ぃするけど・・・。」


「じゃ決まりでさァ。明日早速行こうと思うんでチャイナに言っといてくだせェ。朝の10時に現地集合ってねィ。」


「え、ちょ、沖田くん・・・?いいの・・・?」


「えぇ、他に行くヤツいませんし。それじゃ、伝言頼みましたぜェ」




何でチャイナを誘ったのか自分でもよくわからなかった。


でも・・・
退屈はしないと思ったんだ。

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