♪小説♪

□Love of fate
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キーンコーンカーコーン・・・。


聞きなれたベルの音により授業が終わる。
今まで居眠りをしていた者も、最後のあいさつだけはきちんと起きて礼をしている。
前方にいる目立つ髪を持った彼は、今日も誘ってくれるだろうか?
そんなことを思いながら、期待にも似た感情を瞳に込め、見つめる。
帰り支度をする人。
寝ていてノートを取っていなかったために急いで黒板と同じ文字を繰り返す人。
放課後のことを話す人。
担任がくるまでの間みんな思い思いに行動している。
そして彼は・・・。


「井上、今日は部活行くのか?」


私のところへ来てくれた・・・。


「ううん。今日は部活お休みなの。」


「そっか。じゃ一緒に帰れるな。」


「うん!」


いまだに信じられなかった。
私と黒崎くんが恋仲になるなんて・・・。
こうして一緒に帰ったり、休日を用もないのに一緒に過ごしたりすると、だんだん実感してくる。


「井上ずっと俺のこと見てたろ?6限の礼が終わってから。」


「えへへ。実は念じてたんだ!黒崎くんが今日も一緒に帰ろう、って誘ってくれるように!」


「バーカ。そんなん付き合ってるんだから普通に決まってんだろ。」


「…!」


「なに紅くなってんだ・・・?」


「だって・・・黒崎くんが・・・。」



『付き合ってる』って言ってくれたから・・・なんて伝えられなかった。
きっと黒埼くんは知らない。
私が今どれだけ幸せかを。
担任の乱菊先生・・・っていうよりみんな乱菊さんって呼んでるけど・・・。
乱菊さんが教室に入ってくるとみんな席についた。
乱菊さんのHRは本当に短い。
一言言っていつも終わる。


「それじゃアンタら。明日もサボらず学校来なさいよ。」


そして今日は終わっていく。
乱菊さんなんてもう颯爽と歩き教室を出て行っていた。


「それじゃ帰るか・・・。」


「あ!ちょっと待って。実は日誌を渡しに行きたいんだ。待っててもらえる?」


「今日井上日直だったっけ?」


「ううん。本当は千鶴ちゃんなんだけど、用事があるって急いで帰っちゃったの。だから私が代わりに。」


「井上は頼まれたら断れないもんな。」


「・・・ごめんね・・・?」


「なに謝ってんだよ。井上の長所じゃねぇか。」


「・・・ありがとう!」


「俺もついてくよ。わざわざ教室まで戻ってこなくてすむだろ?」


私たちが教室をでた時には殆どの生徒が帰っていた。
朽木さんにさよなら言いたかったのにな・・・。
きっと恋次くんと部活に行っちゃったかな?
あの二人仲いいもんね・・・。
私も黒崎くんともっと仲良くなりたいな・・・。
隣を同じ歩調で歩いてくれる黒崎くんは、職員室の前までくると私の鞄を持ってくれた。
と同時に・・・。
私の唇を掠めていった。
一瞬しか触れていなかったが、私の頬を紅く染めるには十分だった。


「くろっ・・・黒崎くん!」


「ほら、早く行って来いよ。」


「みんないるのに・・・!は、恥ずかしいよ…!」


「大丈夫だろ。嫌だったか?」


「嫌じゃ、ないです…。」


いきなりでびっくりしたけど、意外と黒埼くんは大胆だ。
こんな顔じゃ職員室に入りづらい・・・。
それでも事務的に乱菊さんのもとへと歩き出す両足。
乱菊さんはそこにはおらず、机の上に日誌を置いておく。
まだ熱が引かない顔をなんとか髪で隠すようにして職員室を出て行く。


「ごめんね。待たせちゃって。帰ろっか。」


「あぁ。」


自惚れかもしれないけど、黒崎くんの私を見る瞳が最近優しい。
笑った顔がやんわりとしていて、つられて私も同じように微笑み返す。
この瞬間がかけがえのない宝物なんだろうなぁ、と考えながら私たちは学校をあとにした。
なんとなく誰かに見られてるような気がしたけど、黒崎くんと話しているとそんな気持ちどこかへと飛んでいってしまっていた。





*************





「この学校の生徒たちはみな個性があって素晴らしい生徒ばかりだよ。きっと君も気に入ると思う。」


「・・・はい。」



理事長室の窓から見えるグラウンドには、校門へと向かう生徒たちや、部活動に汗を流し青春してる生徒が小さく見える。
喧騒とは離れた場所で静かに話しをする二人がいた。



「君のクラスは1−2だ。わからないことがあったら担任の松本君に聞くといい。期待しているよ、ウルキオラ・・・。」


「はい、藍染理事長。」






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