♪小説♪

□Love of fate
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やめて!
現れないで!!
体に刻み込まれた痕が今すぐに消えてほしいと思い何度もシャワーをした。
顔が濡れたのは涙なのかシャワーのせいなのかわからない。
でも目を閉じればあの人の顔が出てきちゃうから、嫌でも思い出してしまうから、必死に瞬きをこらえて浴室の鏡に映る自分をひたすら見つめた・・・。



「・・・!」



睡眠から目覚めてこんなに息を切らしてるのは何故だろう?
織姫はハァハァ言いながら額に手を当てた。
カーテンの隙間から見える外の世界は青空が広がっていた。
心地よい朝のはずなのに、ベッドから抜け出す織姫の体は鉛のように重かった。



「なんで・・・あのときの夢なんか見たんだろう・・・。もう・・・忘れたと思ったのに・・・。」


静寂に包まれている部屋に織姫の声だけが響く。
ぼーっとしていても始まらないと思い、織姫は汗を流すため浴室へと向かった。



「ジリリリリッ!!」



定時刻にセットしている目覚ましが、本来織姫が起きる時間をけたたましく知らせたが、それに気付くことは無かった。



―大丈夫。きっともう会うことなんてないから・・・。


学校に行くまでの間ひたすらそう念じる織姫だった。




「おはよう!朽木さん!」

「あぁ、おはよう、井上。今日も相変わらず元気だな。」

「元気だけが取り柄ですからっ。・・・ねぇ、朽木さん・・・?なんか女の子たち盛り上がってるけどどうしたの?」



教室の一箇所を陣取って数人の女子たちが騒いでいた。
内容までは聞き取れないが、なんだか楽しそうなのは見て取れる。



「うむ。どうやら今日新しい副担任が来るらしいぞ。松本殿と話しているのを見かけたらしい。」

「へぇー。」



あまり興味無さそうに相槌を打つ織姫。
織姫のクラスは個性豊かだ。
担任の乱菊は割りと放任主義だし、飛び級をしてこの学校にやってきた日番谷冬獅朗。
頭のよさは他の追随を許さないことで有名だ。
髪の色と刺青が目立つ阿散井恋次に逆に頭皮丸見えの斑目一角。
妙に自分に自信のある綾瀬川弓親。
他クラスからは可愛いらしい、小動物のようだで有名な雛森桃。
他にもたくさんの個性豊かな生徒が集まったクラスだ。
騒がしいクラスをまとめるのは大変だろうな、とまだ見ぬ副担任を思う織姫だった。



「そういえば黒崎くんは?」


いつもならこの時間には来ているはずの彼の姿が見えず、織姫はルキアに聞いた。


「まだ来ていないようだな。遅刻か?昨日は元気そうだったからな。病気とは考えにくいのだが・・・。」



キーンコーンカーンコーン


チャイムが数回繰り返して鳴り、扉が勢いよく開かれた。



「おっはよー!あんたたちに今日は紹介する人がいまーすッ」


乱菊が入ってきたのだ。
朝からハイテンションなのはいつものこと。
教壇へと進む乱菊の後ろに一人の男が続いていた。



「・・・ッ!」


開いた口元を覆うようにして手をあて、織姫は男を凝視した。



「今日からこのクラスの副担任になるウルキオラ先生よ。担当科目は・・・なんだっけ?」

「・・・日本史だ。」



話を降る乱菊に必要最低限の言葉で返すウルキオラ。
表情もなく口数も少ない彼を織姫はじっと見ていた。


―なんでここにッ!?


織姫は明らかに動揺していた。
ただ見つめることしかできず、できるならこの場から逃げ出したとさえ思った。



―震える足さえ言う事を聞けば教室から出て行くのに・・・。
夢だけだと思ってたのに・・・・
なんで・・・?



がやがやと騒ぐ生徒たちの中に一人だけ自分を凝視する織姫の存在にウルキオラも気付いた。



「・・・!織・・・」

「俺遅刻かー!?」



ウルキオラの声は一護の声によってかき消された。



「朝からうっさいわね、一護。新しい副担の紹介してるってのに。心配しなくても遅刻よ。」

「マジかよ!?走ってきたんだぜ!?」

「遅刻は遅刻。早く席につきなさい。」

「へーい。」



後ろのほうにある自席へと向かうため、一護は歩き出した。



「よ、井上。おはよ」



織姫の横を通るとき挨拶をしたが、織姫は一護の声など聞いていなかった。
ただ一点を見つめる織姫の視線を追えば同じように織姫のことを見つめているウルキオラ。
気まずい雰囲気に気付いたのは一護だけではなかった。
なんとなく異様なムードになる教室内。



「ちょっ。乱菊さん、井上体調悪いみたいだから保健室まで連れてくわ」

「え?あ、あぁ。じゃお願い。」

「ほら、行くぞ。井上。」


一護は織姫を立たせると鞄を置き、支えるようにして教室を出て行った。
織姫とウルキオラの視線は教室を出るまで剥がれることはなかった・・・。



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