○小説○
□冬に平伏すは体温か心か
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ぶるっ。
うー、寒っ。
季節は冬。カナは、うっかりコートを家においてきてしまっていた。
「寒いよー。なんでコート忘れてきちゃったんだろ。馬鹿だなぁ私・・・」
風邪ひいちゃいそう。ダッシュで家に帰ろうかな・・・。
そんなことを考えていると・・・。
「カナちゃん?」
「え?わっ!り、リクオくん!」
「カナちゃん、帰らないの?」
「か、帰るよ!・・・リクオくんは?なにしてるの?」
「ん?つららのこと待ってるんだ」
つらら。
ずき・・・
なんで私、リクオくんが及川さんの名前呼ぶだけで、こんな・・・。
胸が、苦しくなるんだろう?
「カナちゃん、なんか寒そうな格好してるね」
「あっ・・・うん、コート家に忘れてきちゃって」
「そうなんだ。じゃあ、手だして?」
「え?」
「はい、これ」
カナに手渡されたのは、カイロだった。
「風邪ひいちゃうといけないしね」
きゅん。
こんなちょっとのことで、さっきまで苦しかったのに、今は、嬉しくて、嬉しくて・・・
「あ、ありがと///」
「どういたしまして」
私・・・リクオくんのこと、好きなのかな。
つい最近まで、ただの幼馴染だったのに。
今は・・・
気づけば、リクオくんのこと考えてる。
「リクオさまーっ!!」
「「!!」」
「つらら!」
「遅くなってすいませんー!」
及川さん・・・。
そうだ、だめだよ。
リクオくんの心には、及川さんしかいないんだから。
「さあ!帰りましょうリクオさま!」
「うん!じゃあね。カナちゃん」
「うん。じゃあね」
ずきん、ずきん。
苦しい、な。
「くしゅん」
「つらら?寒いの?」
「いえ!大丈夫です!私は雪女ですし!」
「だめだよ。ほら、これ着な」
ずきん。
そういってリクオは、自分の着ていたコートをつららに着せた。
「あ、ありがとうございますリクオさま///」
「いーえ。あ、じゃあついでに、手、つなごっか」
「え!?あ・・・はい!」
「ふふ」
「あったかいですね!リクオさま!」
「そうだね」
ずきずきずき。
私には、カイロ一個。及川さんには、自分のコート。
もう、望みなんてないよね。
「おかしいな・・・。カイロ、冷たいよ。リクオくん」
リクオくん。好きだったよ。
ばいばい。
END