○小説○

□左手薬指、予約中
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「若っ、大変です!」

ドーンと効果音がつきそうなくらいの勢いで僕の部屋に入って来たのは雪女のつらら
今日は日曜日だし何も用事はないので布団に横たわったままだった僕は体を起こした

「どうしたの、つらら。」
「大変なんです、私!私、わっ私…」
「おっ落ち着いてよ!」

目の前にちょこんと正座したつららがあまりにも慌てるのでこっちまで少し焦ってしまう
兎に角落ち着くように言った時、膝の上でぐっと握りしめられている両手に目がいった
両手と言うよりは左手の薬指にはめてあるもの、と言った方が正しいのかもしれない
僕は一気に青ざめた

「つ、つらら…それどうしたの、?」
「へ?あっこれ…!やっぱりそうなんですね?!」
「え…何が?」
「誤魔化さなくてもいいんですよ、若!もう余命幾ばくもないんですから、」
「余命?!何でそうなるの?ちょっと詳しく説明して!」

全く話がかみ合わないので内心ヒヤヒヤしたままの僕は、つららに詳しい話を聞くことにした


「実はこれ今朝牛頭丸に魔除けだって言われて、この指にはめられたんです。
その後の買い出しの時に島くんたちに会ったんですが、指輪を見るなり慌てだして…!
死ぬとかうわぁって叫んだり、後ろにいた家長は無言で青ざめていたり。
これ…呪いの指輪なんですかね?!
私死んじゃうんですか?!
わっ若ぁ〜…!」

今にも泣き出しそうな顔をして僕の肩を掴むつらら
なんだ深い意味はないのか、と僕はホッとした
それにしても女の子なのに左手の薬指につける指輪の意味を知らないなんて…
いや、妖怪なら知らないのは当然なのか?
とりあえずまだ余命がどうのこうのと言っているつららに声をかけた

「大丈夫死なないよ。それは多分島くん自身がショックでって意味でつららには関係ないよ。」
「何故島くんがショックを?」
「んーと、その指にはめる指輪には特別な意味があってそれでだと思うよ。」
「特別?と、特別って?!やっぱり呪いですか?」
「そうじゃなくて、何て言うのかな。…誓い、みたいなものかな〜。」

そう言うと手を目の前に持ってきて、ジロジロと指輪を眺め始めた
僕はそれが気にくわなくてつららの手をとる
そしてその白い指から指輪を抜き取った

「お願いがあるんだけど、」
「なんでしょうか?」
「この指…僕のために空けといてほしいんだ。」
「…若のために、ですか?それは構わないんですが」
「意味はね、」

僕はつららの言葉を遮り言った

「永遠の愛と絆、だよ。」

真っ直ぐ目を見つめて言い切った
キョトンとしていたつららの頬が赤くなる
そして恥ずかしそうにフフっと微笑んだ

「絶対にこの指は空けておきます。」
「約束だよ。」
「はい―…」



空は綺麗な青で
僕の心も快晴の澄んだ青
その指に指輪をはめるのはいつになるだろうとぼんやりと考える、そんな日曜日…







左手薬指、予約中


(とりあえず牛頭丸を…)
(何か言いましたか?)
(つららは気にしないで!)








アトガキモドキに見せかけたお礼!
瑠依から素敵なリクつらを頂いちゃいました☆
これは結婚間近ですねw
つららの左手薬指は若専用だなんて激しく悶えました!
素敵なリクつらありがとうございます!

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