お題
□どうしよう隠しきれない
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昼間のかぶき町。
紺色の気長しに腰刀を置き、自販機で買った煙草の一本を燻しながら群衆をすり抜けていく。
久しぶりの非番、映画でも見ようと映画館の前で足を止めるが、上映されているのはラブストーリーばかり。
純愛などと書かれた見出しに苦笑し、また足を進める。
奇抜な格好、覇気のない瞳、あほみてェな銀髪頭。
(…クソ、頭から離れねェ)
短くなった煙草を地面に落とすと、自分の感情を押し潰すように踏みつけた。
気に入らねェ、そう呟く度、あいつの存在が俺の中で濃く色を残していく。
(何で)
尊敬や、憧れのような、そんな大層な感情で無い事は確かなのに、(実際あいつの事なんざ、何ひとつ知らねェ)この焦燥感が拭えない。
気に入らない、いけすかない、そんな不満の感情の中に混ざった、理解不能の思い。
街で見かける色素の薄い髪色、それが銀髪でない事に安堵している自分…
(一体どうしたんだ俺ァ…)