お題

こんなの恋じゃないのに
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あの人はいつものように女に振られ、頬に大きな青痣を作って、それでも何故か誇らしげな表情を浮かべながら帰ってきた。

俺はいつものように呆れ顔を浮かべ、大きなため息をつくと、馬鹿だなあと呟いて自分の気持ちを押し殺した。

いつもと変わらない、いつもの日常。



「でもさ、嫌い嫌いの好きのうちって言うじゃん。これって俺的に脈ありだと思うんだけど、トシはどう思う?」

「それが愛情表現の裏返しに見えるか?俺的に殺意以外の何ものにも見えない」

「でも殺したいほど何とやら、みたいな」

「まあそういう考えもあるか」

「お妙さんは不器用な人なんだろうな」

「そうかもな」

そう言って小さく笑ってみせた。

しっかり笑えている分、俺は器用な方だ。


「でも、俺はそんなお妙さんが好きなんだよね」


近藤さんが右頬に出来た青痣に触れると、

「だろうよ」

そう呟いて、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。

自分の気持ちを一緒に押し潰すように。


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