:)短編

塩キャラメル
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ぽん!
何かがはじけた音がした。

丁度その時、俺は勤務意
欲が急激に薄れていた。
大きな仕事をやり終え、
燃え尽きていたのだ。

不器用に筆を回しながら
始末書をぼんやりと眺め
ていると、部屋に甘い香
りが漂ってきた。

…何だ?この匂い。

俺はこの手の甘い匂いが
苦手だ。
甘味屋の前を通れば、餡
や黒蜜の香りには酔って
しまうし、近くで誰かが
甘い物を食べていれば、
何故か胸焼けをする。


…くそ、むかむかする。


筆をくるくる回している
と、一言の断りも無しに
いきなり襖が開き


「土方さん、巡回行きま
しょうぜ」


と、総悟が言った。



総悟の腕には、質素な容
器に入ったふわふわの白
い物体が抱えられている。

ポップコーン?

あの音はポップコーンが
はじけた音だったのか。

俺は腰をあげる。

甘い匂の正体は、ポップ
コーンにかかったキャラ
メルのようだ。


(つーか、何で仕事中に
ポップコーン作ってんだ
こいつは)


「今日はお前とか?」

「嫌なのはお互い様でさァ」

「俺、嫌なんて一言も言
ってねぇんだけど」

「心の声が聞こえたんでィ」


俺はうんざりしながら手
のひらで顔を覆った。
甘い匂いに酔いそうだ。

総悟はそんな俺にはおか
まいなしに、白いポップ
コーンを口に運んでいる。



真っ白でふわふわで、歪
で適当なかたち。

頭の片隅に何かが過った
が、すぐに消えた。

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