Long*serious story p1

□【Memory】第一話
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『アレン、あーそぼ!』




俯いて座り込む、薄汚れた僕。その目の前に、無邪気な笑顔で手を差し伸べた彼女は、僕にとって太陽みたいだった。





マナと一緒に、旅をする日々。普通の道化のように、みんなから笑顔を向けられることもあれば、右手のせいで受け入れてもらえないこともしばしばあった。その街も、そうだった。そういう時はマナが気を回してくれて、僕はだいたい裏手の人目に付かないところでやり過ごす。だから初め彼女に見付かった時は驚いたと同時に、肝が冷えた。





けれど、そんな僕に差し向けられたのは笑顔。子供にも大人にも受け入れてもらえない僕に手を差し伸べたのは、彼女が最初で最後だった。









『アレンの左手はおもしろいねー』

『なんでもできちゃうんだもん。すごいよ!』

『なんでみんなはアレンのすごさに気づかないのかなぁ……』







『やめて!やめてよ!なんでそんなことするの!?』








とうとう街の人が僕に向かって石を投げたときも、彼女は僕と街の人の間に立ちふさがった。





「どきな!そいつの左手が見えないのかい!?」

「そいつは悪魔の手だ!」

『ちがうよ!そんなことないよ!アレンはそんな子じゃ……っ!』

「嗚呼……可哀相に。悪魔に誑かされてしまったよ…」

『ママ……!?パパ!?』










彼女の両親と思しき人物が振りかぶり、白石を投じるのが見えた。彼女が左目を押さえて崩れ落ちる。鮮やかな赤い雫が飛び散る。自分の口から声とも思えない悲鳴が溢れだして……






















「…アレン君……アレン君!」

「うわぁっ!!」

「どうしたの?うなされてるみたいだったけど……」

「だ…大丈夫です。大したことないですよ、リナリー」






どうやら僕は遠い昔の夢を見ていたらしい。名前も知らないあの子が、その後どうなったかは知らない。振り返ったあの子に言われるがまま、僕はマナとその街を出たから。でもあの出血から考えて、左目を失ったのは確かだと思う。あるいは、もう───





「着いたわ、アレン君」

「え…?あ……」

「まずは泊まる場所を探さなくちゃね」





降り立った街。
イノセンスがあるかもしれない街。
懐かしいような寂しいような風が僕を包んだ。






追憶の街








リナリーが見つけだした宿屋、その主人は一人の盲目の少女だった...




(201301加筆修正)


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