U

□フラスコの中の小人(ホムンクルス)
3ページ/8ページ




「少年...ねぇ、そこの君」



「!!
いけない!!」



金髪の少年は掃除中だったらしく



途中で寝てしまったのか、



声を掛けられた事によって慌てて起きた



「大丈夫だ」



声の主の居場所がわからないのか



キョロキョロする少年



「こっちこっち」



「......なんだ」




フラスコの中の黒い物体から声がしている



そんな所から声がしても



普通に会話を続けようとする少年




「おいおい...君ね、
ちょっと驚くとかなんかしたらどうかな?」




「驚いたらなんかくれるのか?」




「ほぉ、物おじしないのは気に入った...
君の名前は?」



「23号」



「番号じゃなくて、
ホントの名前を教えてくれよ」



「ねぇよ、奴隷だもん」




当然のような表情でそう言う少年




「奴隷...権利や自由が得られず
所有物として譲渡される人間」




「譲渡...?」




少年には少し難しかったのか、首を傾げる




「財産、権利等
他人に譲り渡すこと」




「ふーん」




「キミ頭悪いんだなぁ〜...」




「ほっとけ!!」




その言葉に少しキレる




「何故こんなのから私が生まれたのか
サッパリ分からない
君だろ?私に血をくれたのは」



「...!
そういや、実験に使うってかなり...」




右腕に巻かれた包帯を見つめる少年




「君が血をくれたから、
私はこの世に生れ出た
ありがとう、えっと...やっぱり
23号では素っ気が無い
私が名前をつけてあげよう」




「何様だお前...」




少し眉間に皺を寄せて不服そうな表情だった




「立派な名がいいだろう...
そうだなぁ〜うぅん...
テォ...
テォフラスト・ゴンパスト「長げェよ」」




すかさず、長ったらしい名前を唱える物体に




突っ込みを入れる




「...え?
...そうか!長いのは覚えられないんだね
頭悪いから」




「頭悪い言うな!!」




一言も二言も多い黒い物体だった




「それじゃ...
ヴァン...ヴァン・ホーエンハイムで
どうだろう?」




「ヴァン・ホーエン...
それくらいなら覚えられるな...」




「綴りは...って
そうだ君、文字の読み書きは?」




「そんなもの出来なくたって、
仕事は出来る!」





「奴隷の仕事...」




黒い物体がそう言ったとき、



少年は目を丸くした



「自由と権利が欲しくないか?
人間としての権利を手に入れないまま
奴隷で一生を終える気か?
それでは、息苦しいフラスコの中にいるのと
同じだ
知識を与えてやろう
ヴァン・ホーエンハイム」




それを聞いた少年は真剣な眼に変わる




「なあ...お前は
なんだ?なんと呼べばいい?」



「フラスコの中の小人
ホムンクルスとでも呼んでもらおうか」




ホムンクルスはニヤリと笑ってそう名乗った

























次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ