MY NOVEL

□甘い命令
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カチカチ
何メートルもあるダイニングテーブルの橋でため息をつきながら時計を見るのはこの屋敷の主であるシエル・ファントムハイウ゛伯爵だ。
「…でつまりこの計画には是非とも伯爵の力添えが欲しいのです。」
チラっとシエルが見た方向には暗黒街をなんとか制圧しようとしているカウリッジ・タミルトン子爵で隣には従者のマクスウェル・ラインハートが座っていた。
「はぁー。貴公の言い分もわかるのだがイーストエンドを玩具やお菓子でいっぱいににする必要性をわが社は全く感じない。ふざけるのも大概にしていただきたい。」
カウリッジが机に手を叩き立ち上がる。
「そうすればイーストエンドは華やかになります!子供達に笑顔ができます。」
「その子供に万引きされるのが落ちだ。」
まったく、心にも無いことを。
と思いながらシエルはダイニングルームを後にする。
「セバスチャン、夕食が終わり次第子爵を玄関まで送ってくれ。」
「イェス。マイロード」シエルの横に居た黒の燕尾服を着た執事が頭を下げてシエルをドアまで送る。
「待ってくれ!まだ話しは終わってない!」
「僕は終わった。残念だがわが社はそんな戯れ言には構ってられない。悪いが他を当たってくれたまえ。」
キィーガチャン
シエルが退出する。
「く…」
カウリッジは勢いよく座る。
「すみません、少し新鮮な水を持ってきてくれませんか?」
マクスウェルがすかさずセバスチャンに頼む。
セバスチャンはピクリと眉を上げたがすぐに笑顔で。
「かしこまりました。と言い部屋を出る。」
綺麗な黄金の髪を一束にしているマクスウェル・ラインハートはその美しい容姿だけではなく、ロンドンの中でも五本指に入ると言われている策士だ。セバスチャンに新鮮な水を頼んだのもこのロンドンでそんな物が見つからない事をよんでの事だ。
「カウリッジ子爵。私に良い案があります。」
「なんだそれは…?」
「それは…」
マクスウェルはカウリッジ子爵の耳元で囁く。
カウリッジの疑いの顔がにやりと意地の悪い笑みに変わる。
「確かにそれは…あの伯爵でも簡単に操れるかもしれない。」
マクスウェルがカウリッジに笑みを返すと…
コンコンという音と共にセバスチャンが入って来る。
「新鮮な水と今夜のデザートであるアップルパイのシナモンがけをおもちしました。」
セバスチャンはそのまま入ってマクスウェルの前に水の入ったコップを置きアップルパイのサービングに入る。
さすがにこれにはマクスウェルも泡を食った。
「こんな汚いロンドンに新鮮な水などないはず。しかもこんな短時間でアップルパイも一緒に出すなど…」
セバスチャンはマクスウェルに向かって笑みを浮かべさらりと答える。
「あくまで執事ですから。」
その言葉にマクスウェルはこれ以上追求しても無駄だとわかり口を閉じる。

アップルパイを食べ終わり、カウリッジとマクスウェルはロンドンにあるファントムハイウ゛邸を後にする。
「では始めるぞラインハート。」
「はい」
二人は猫の様に屋根の上までかけあがる。
子爵の黒髪は風邪に吹かれて夜空の中で靡く。そして懐から何か出す。カメラだ。
「まさか今日掠めたこの最新技術で作られたカメラがやくにたつとはな。」
ふっとまたあの意地の悪い笑みになる。
「後はお前の算段で行くぞラインハート」
「はいタミルトン様」
そう言うと二人はシエルが見える窓を探し、窓を背に書類に明け暮れているシエルを見つけるなり、窓を開け後ろからクロロホルムをたっぷり含んだハンカチをシエルの鼻や口元に抑えつける。
最初は反抗していたシエルも窒息とクロロホルムの臭いですぐにぐったりしてしまう。
ラインハートはその後シエルが完全に眠りつくまでハンカチを離さず、窓から外に出る。
その頃屋敷の中では…
ガシャン
「ああ…せっかく坊っちゃんにお似合いだと思って取り寄せたウェッジウッドのティーカップが…」
いきなりテーブルに乗った猫のせいで、キッチンで用意していたカップを割られてしまっていた。
「坊っちゃん…?」


「う…うん」
目を開けるとシエルの前にあったのは山のような書類などではなく、山のような麦袋だった。ここは港町の倉庫だ。
「お目覚めかね伯爵?」
マクスウェルだ。
「僕を縛り付けて何のつもりだ。」
「いやぁ伯爵は女王の番犬って呼ばれてて暗黒街や裏社会を統治しているらしいじゃないか。私達はそのおこぼれが欲しいんだよ。言っている意味わかるよね、伯爵?」
「あいにくこぼれは生じていない。」
「ふぅーん。じゃあこっちのおこぼれ貰おうかな?」
そう言うとシエルのズボンをおろす。
そして足の間にある性器を扱く。
「く…ん…やぁ…やめ…ろ。」
シエルはマクスウェルの愛撫により簡単に立ってしまう。
「可愛いね。もうこんなに溢れてきてる。」マクスウェルはそう言うと溢れ出した蜜をなめる。
カシャッ。
シャッターの閉まる音がする。
音がしてきた方向を見るとカウリッジがカメラを持ってシエルを撮っていた。
「この写真を公開されたくなければ俺達に金とお前の所有権を少し戴こうか。」
カウリッジの顔が強欲で醜くなる。
「く…」
「セバスチャン!僕はここだ!命令だ僕を助けろ!」
シエルは眼帯のついていた右目を大きく開き叫ぶ。
とたんに倉庫内の蝋燭や松明が消え、セバスチャンの声が響く。
「イェス・マイロード」
「何が起こったんだ?…ぐふ」
「早く…早く明かりを…ああああぁぁぁ!」
二人の悲鳴が終わるとセバスチャンが蝋燭を持って現れる。
「…奴等は?」
「醜い野良猫は処分しておきました。」
セバスチャンはにっこりと微笑み口を開ける。
「その娼婦の様な無様な姿。坊っちゃんに良く似合っていて素敵ですよ。」
「誰に向かって口を聞いている?早くこの縄を解け。ロンドン邸に帰る。」
「御意」

シエルはベッドに降ろされ縄を解いてもらい、寝る支度に入る。
「マクスウェル殿に弄ばれて、酷いことになってるんではありませんか?」
セバスチャンはシエルの赤い顔を見ながら聞く。
「ああ…そうだ。だから…」
「だから…?」
シエルは顔を真っ赤にしながら言う。
「僕から出せ。」
「坊っちゃんの為なら。」
「では失礼。」
ワイシャツ一枚のシエルからその着ている一枚を脱がせる。
そして立って時間が経ってしまってはち切れそうなそれを口に含む。
「はぁ…あ」
口の中でセバスチャンは舌を尖らせ裏を嘗め、吸い上げる。
そして時に口から出して全体をなめまわす。
「あ…でっ出る」
「出してください。」
セバスチャンは強く吸い、蜜の入った袋まで手で愛撫をする。
「ああああぁぁぁ!」シエルから出たそれをセバスチャンは事も無く飲む。
そして気を失ったシエルに布団をかける。
「おやすみなさい坊っちゃん。」

チュンチュン
カタカタ
シャッ
まぶしい光が入る。
「おはようございます坊っちゃん。」
「うん…昨日の奴等の素性わかったか?」
「はい。彼らは元はスペインの泥棒兼詐欺師。名前をLos rateros de gatosと言います。」
「泥棒猫か…」
「イギリス本国に来たのは五年前でその時からカウリッジ子爵に化けていたようです。」
「そうか…」
アールグレイを飲みながらシエルは資料を眺める。
「金で人は醜くなる…そういえば悪魔なども強欲等で醜くなったりはしないのか?」
セバスチャンの方を見るとスコーンが乗った皿を片手ににっこりとシエルの方を向く。
「中にはいますよ。しかし…私はあくまで執事ですから。」
 

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