短 編

□依存と主従と情愛と
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視線を庭から膝枕をしてくれている日番谷へと向けると、市丸の頭にあった日番谷の手も、するりと落ちた。


「冬、眠いん?」


見上げた日番谷は、こくりこくりと舟を漕いでいて、綺麗な碧の瞳も瞼の奥に隠れ見えない。


「……ん……」


姿勢を崩さぬよう意識しているからか、まだ眠りの入口辺りをさ迷っている。
布団に入れてやろうと起き上がるが、市丸の重みが無くなり、小さな身体は後ろへと倒れかかる。


「冬っ、あぶな……っ」


即座に手を伸ばすが、新たに現れた氷の腕に先を越されてしまう。


「…………へ?」


周囲には冷たい空気が漂い、日番谷を抱き上げたのは天空と瑠璃の着物に青碧の髪。


「何を呆けた声を上げているのだ。風呂上がりの主が風邪をひく」


顔に大きな傷のある逞しい男が、市丸を見下ろしていた。

氷の両腕で、まるで壊れ物か何かのように日番谷を抱き込み、見上げる市丸を冷めた瞳で暫く眺め、踵を返す。


「いつまで転がっているつもりだ?」


ふん、と鼻を鳴らされ、市丸の眉が嫌そうに歪む。


「キミ、絶対に冬の前には姿を見せんのやね…なんでなん?」

「お前が知る必要は無い。さっさと布団を敷かぬか」


顎で押し入れを指され、「しゃあないなぁ」と重い腰を上げ、不本意ながらも市丸は押し入れへと足を向ける。

慣れた手つきで布団を敷くと、そっとその上に男は日番谷を寝かせた。


「ボクん前でも滅多に出て来ぇへんのに、なんで出て来たん?」


わざわざ布団を挟んで座り、へらりと笑いかけるが、男は相変わらず冷めた瞳のままで市丸を見返す。


「おぉ怖ァ。そんな怖い顔せんでもえぇやん。主がそんなに気になるん?……なァ、氷輪丸?」


胡座をかき、足に肘をついた市丸は、業と煽るような物云いをしながら、日番谷の頬を撫でる。


「我が主に余計な心配をかける、お前が悪いのだ」


ぱし、と氷の指先で払われ、市丸は肩を竦めた。


「そんなに冬を心配させてもうたんや。なんや嬉しいなァ」

「……なぜ主がお前のような者を傍に置くのか、我には理解できぬ」


布団に包まる日番谷を、氷輪丸はただ見つめた。





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