女神の祈り

□まるで御伽噺
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白髪の少年は高くそびえる断崖絶壁を懸命に登っていた。
少年の傍らでは蝙蝠のようなものが群れを成して飛び交っている。
それらと同様に黄色い鳥のような翼のものは頑張れと言わんばかりに少年の周りをパタパタと飛び回った。
「…はぁ…、はぁ……な…、なんでこんなトコにあんなもん建てたんだ…」
こんな崖に建てて、大きな災害に見舞われたらどうするんだと少年は疑問を抱く。
そもそも垂直斜面を命綱なしで上っていること自体、奇跡に近いのにだが。
息も絶え絶えに漸く頂上に辿り着いた。
「や…、やっと着いた…エクソシスト総本部…。黒の教団…かな?」
それはまるで物語の最後を飾る悪役の基地のような重圧感を雰囲気を醸し出している。
「話には聞いていたけど、なんてゆーか雰囲気あるな…ここだよね。ティムキャンピー?」
色々疑問に思う所もあるが、土埃を払い意を決して歩み出した。
「とにかく、行ってみるか」
一方、黒の教団の人々はざわざわと忙しなく各々の仕事をこなしているようだ。
「なんだい、この子は!?ダメだよ、部外者入れちゃあ〜〜なんで、落とさなかったの!?」
どうやら先程の少年は部外者とみなされているらしくベレー帽の男は煩わしそうにモニターを眺める。
「あ コムイ室長。それが微妙に部外者っぽくねーんスよね」
それを耳にした野次が、何だ何だと集まってくる。
「ここ見て、兄さん。この子、クロス元帥のゴーレム連れてるのよ」
艶やかな黒髪をツインテールにした少女が、モニターに写る少年と金色の浮遊物に指を指した。
《すいませ――ん!!クロス・マリアン神父の紹介で来たアレン・ウォーカーです。教団の幹部の方に謁見したいのですが》
元帥の知り合いだ!あの人生きてたのか、と様々な驚きの声が上がる。
「紹介って言ってますけど、室長何か聞いてます?」
「……知らない」
ベレー帽の青年は知らないの一点張りでモニターを見ながら珈琲を啜る。
すると《後ろの門番の身体検査受けて》とアナウンスが流れる。
「え、」
身体検査を行う肝心な門番が不在で、あるのは闇を思わせる十字架が施された巨大な扉と両サイドの扉の中央に埋め込まれた気味の悪い巨大な顔があるだけだった。
Gete Keeperと顎に記されている。
どうやらこれが門番らしいが、底なしに気持ちが悪い。
「……どうも」
どんなに気持ち悪かろうと律儀に接するアレン。ぐおと勢いよくアレンにその巨大で不気味な顔を近づけると、アレンはの全身の毛穴が縮まり、硬直したまま見上げる。
《レントゲン検査!アクマか人間か判別!!》
「わっ」
《!?映らない?バグか!?》
映像に映し出されたアレンは一部が霞み、ゆらゆらと逆さまの星型が門番の目に映った。
《ブーーーー!!こいつアウトォォォオオ!!!》
突如、教団にが響大が絶叫が轟いた。
「へっ!?」
アレンは蒼白し冷や汗を流す。
《こいつバグだ!額のペンタクルに呪われてやがる!アウトだアウト!!ペンタクルはアクマの印(マーク)!!こいつ奴等の…千年伯爵の仲間(カモ)だー!!!》
門番は涙と鼻水を盛大に喚き、なんとも情けない光景が目に飛び込んできた。
「んなっ?」
「なにぃ―――――!?」
突然の宣告に、一同は騒然とする。
《スパイ浸入!スパイ浸入!》
「おい城内のエクソシストは……」
「大丈夫じゃ」
月をバックに黒い影がモニターに写し出される。
少女は得意気に微笑んだ。
「神田がもう着いたわ」
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