女神の祈り

□月夜の使者
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「検査が終わるまでこちらで待つようにと、兄さんが…」
「そう」と一言返すと細長い脚を組み直す。
―――綺麗な人…
造形の美ともとれる壮麗な姿に魅入っていると、リナリーの視線に気付いた彼はゆっくりと睫毛を揺らす。
「まだ何か?」
「あ…ごめんなさい。すごい綺麗だなと思って…」
思ったことを正直に言ってに恥ずかしくなり赤面し、リナリーは視線を逸らした。
そんな彼女を咎めるわけでもなく、ただ興味なさげにシェイドは呟く。
「そう」
程なくして静寂が訪れる。
このいたたまれない空気を何と体現したらよいのだろうか。
兎に角、気まずい。
何とかこの気まずさを打破できないかリナリーは思考を巡らせる。
辿り着いた先は……
「コーヒー、飲みませんか?」
シェイドは一瞬驚いたような顔をして視線を戻した。
「では戴こうかな」
その答えにリナリーは安堵した。
断れたらどうしようかと思ったが、取り越し苦労だったみたいだ。
早速、リナリーは給湯所へと急いだ。
戸棚からマグカップとソーサーとティースプーンを取り出し、いそいそとカップにコーヒーを注ぐ。
取りあえず砂糖とミルクも持って行くことにした。
「お待たせしました」
リナリーは片手で器用に扉を開けると、そっとカップを差し出した。
「砂糖とミルクは?」
「いい」
ソーサーを持ち、カップを掴んだシェイドは、コーヒーを口に含む。
「これブルーマウンテンだね」
「そうです。兄が本格的なのが好きなので…」
「そう」
再び訪れる静寂。
しかしその刹那、カチャリと扉が開け放てられる。
「ただいまー!リナリー!お兄ちゃんにコーヒーを注いでくれないか?」
「え?ええ、分かったわ」と小走りで給湯所へと駆けていった。
おちゃらけた雰囲気は一気に室長の顔に変貌を遂げた。
「さて、単刀直入に聞くよ」
コムイの眼鏡がキラリと光る。
「キミは何者だい?」


The end


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