女神の祈り

□Blind Messages
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(目的、ねえ…)
柔らかな天鵞絨(ビロウド)の髪を垂らした少年は、その均整な目鼻に深い皺を刻んで赤毛の男の言葉を反芻した。
別れ際の一言がどうも気がかりでシェイドは訝しむ。
半ば流される形で引き受けてしまった仕事。
具体的な要項に不明な点が多く、何をすべきかも分からず迷走し二進も三進も進めない状況が続いていた。
アイツは何を思ってアレン・ウォーカーの監視など任せたのか。
俺以外にもっと相応しい奴がいるはずなのにアイツは俺を選んだ。
もしかしたら俺の過去と何か関係があるのではなかろうか?
現在掴んでる情報としてはアレン・ウォーカーは生来イノセンスを身体に宿し、いつか黒い未来で時の破壊者なるであろうことだけだ。
以前、ここへ訪れたことがあり中枢こそ既知していなかったが、ヘブラスカの預言はよく当たるという噂を小耳に挟んだことがあったのだ。
あくまで推測だが“時”は伯爵を指していて、“破壊者”つまり伯爵を倒す存在ではないかとひとつの仮説を立てた。
恐らく欠乏した過去と時の破壊者が密接に結び付いていることは間違いない。
でなければ暴君のアイツが契約という回りくどい名目でわざわざ監視などさせようと思わないはずだ。
いくつもの因果が蜘蛛の糸のように絡んで、ただそれに翻弄される。
アイツは、クロス・マリアンは何を知っているのだろうか。
それが脳内を駆け巡って、必死に探しても答えは闇の中に融けていく。
蓄積された疑念は晴れることなく水泡となり、水底に消えていった。


The end


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