血液は、全身を巡る(仮)

□いち、眠りにつく
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 いち、眠りにつく




 むかしむかしあるところに美しいお姫様が住んでいました。

 お姫様は両親や家臣、また、国民にとても愛されて、聡明で心優しく成長しました。

 ところが、お姫様の美しさを妬んだ悪い魔女が永遠の眠りにつく魔法をかけたのです。
 王様やお妃様、家臣たちは悲しみに暮れ、国民も悲しみに包まれました。

 ところが、隣の国の王子様は美しいお姫様が永遠の眠りについてしまったことを知りました。王子様は悪い魔女の住む不気味なお城へと向かいました。

 王子様はドラゴンに化けた悪い魔女を追い詰めて、ついに悪い魔女を倒したのです。

 王子様は、お姫様に口づけを交わし、本当の愛が魔女の魔法を解いたのです。

 そして、王子様とお姫様はお互いを愛し、末永く幸せに暮らしました。



 「え、くそつまらんのだが?全然レビューと違うじゃん。」
 夜勤明けのテンションで近所のレンタルショップのパッケージを見て、借りようとしたが、駄作臭がしたのでスマホでレビューを見てレンタルしたが、やっぱりつまらんかったわ。なんやこれ。

 「眠り姫ベースだし、ファンタジーだし、面白いと思ったんだけどなぁ。なんで、最後で乳繰り合ってんの?本当の愛って、ただ性行為してるだけやんけ!」

 「てか、王子様超面食いだし、魔女ディスりすぎだわ。魔女、ホントは国の防波堤みたいな役割なのに何この当て馬。超かわいそ。なんか後味悪すぎ。」

 こんなの借りるんじゃなかった。睡眠時間返せー。

 蝉たちが雌を求めて、声を上げている。ここ二日雨が降っていたので、激しく鳴いているようだった。

 「今日は、なに、のもおかなぁー?」

 真昼間から酒盛り。若干の罪悪感と大幅な優越感を胸に抱き、冷蔵庫を開いた。

 「ああん!アオヒビールあるぅ!それとー、おつまみはー」
なんだかとっても気分がいい。だって、夜勤明けだもの!貴重な2連休だもの満喫しなくちゃ!

 それから、私はビールとチューハイ、ハイボール、カルテル、梅酒、冷酒をちゃんぽんして休日を味わった。


 「あー、神様、この罪深い私を許して下さい。何でもしますから。」

 ちゃんぽんし過ぎて、二日酔いした。多分、カクテルと梅酒と冷酒がかなり効いたのかも。あ、まだ、吐けそうかも。

 そういえば、私、そんなにアルコールの分解早くないんだった。こんなに飲んだのいつぶりだろうか。

 「あー、何で、何で、」

 やばい、顔から出るもの全部出てきそう。

 「さみしいよぉ、つらいよぉ、ふぇぐ、おえ、はぅ、あいたいよぉ、おとこなんて、きらい、なにが、あい、だよぉ、みんな、せっくすしたいだけの、さるじゃんかよぉ!」

 頭ではもう考えられない。ただ、体が悲鳴のように戯言だけを吐き出していた。もう限界なのかもしれない。

 なんか、もういい、かな、なんて。



 開始早々ゲロインです。そういうテイストです。
 

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