血液は、全身を巡る(仮)
□に、魔女の呪い
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に、魔女の呪い
背中の痛みに痛みを覚え、目が覚めた。あれ、私、ベッドで寝てたっけかな?なんだか、私の部屋の雰囲気と違う。
周囲をぐるりと見回すとアンティーク調のサイドテーブルとお揃いのベッドに横たわる私の横に普段使いのお気に入りの私のバッグ。
え?どういうこと?
只ならぬ状況に頭の中が追いつかずパニックになる私。誘拐されたんじゃ…不安に駆られさっさとこの場所から離れようと体を起こすと胸の中心部に血液が集まり、熱を帯びて次第に痛みへと変わっていった。
なにこれ、心筋梗塞?
あまり痛みに声を出すことができず、呻くことしかできなかった。
すると、突然、男の声がした。私は、突然のことに驚いたものの、神にも縋るような思いで、男に助けを求めた。
「イノセンスの副作用だ。今は横になっていろ」
いのせんす?なにいってんの、コイツ。どうでもいいから救急車呼んでくれよ!
私は息絶え絶えにバッグを引っ掴んで、スマホを取り出した。なんとかスマホに番号を入力して電話をかけた。
しかし、何度かけても電話は繋がらない。もうダメだと絶望の淵に立たされた。まさか、こんな知らない場所で、謎の男に見殺しにされてし死期を悟るとは思いもしなかった。
あぁ、私、死ぬのかなーなんて思ったとき、謎の男が謎の呪文を唱え始めた。すると、みるみるうちに胸の痛みが嘘のように消えていった。
水を得た魚のように私は何度も何度も呼吸を繰り返した。体は楽になったものの、今度は身体中が熱を帯びている感覚があった。熱を出した時とは違って、何かの温かなぬくもりに包まれているような感覚に近い感じがした。
視界が霞む中で誰かに抱きかかえられるような錯覚と煙草のほのかな香りに包まれて、私は意識を手放した。最後に見えたのは真っ赤な血液のような髪の毛と男の人の柔らかな眼差しだった。
「全く、なんて無茶をしやがるんだ。バカな女だ。」
男はおもむろにワイングラスを口に含み、腕の中で眠る女の口許へ自身の唇を寄せた。
ちょっと、冒頭の眠り姫ちっくでロマンチックに!