短編小説
□たまには静かにお酒でも
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「…ストーカー?」
土方の手土産の羊羹にちらちらちらちら視線を投げて銀時が言うと、はあ、と土方が溜め息を吐いた。
「ああ、本当なら斬ってやりてぇ所なんだが、どうも陰険な野郎でな。一向に本人は出てきやしねえ」
「そりゃあ許せんね、いやまじで。オレの土方くんに何してくれてんの」
「…食いたいなら食えばいいだろ」
いそいそと包丁を用意する銀時の姿に、土方は深く深く息を吐いた。
(怒るのもツッコむのも面倒くせえ…、なんで今日に限って眼鏡がいねえんだ…)
土方が久しぶりに昼間に来るからといって、銀時が従業員を揃って家から出したなどとは知らない土方は心の内でぼやいた。
恋人であるはずの銀時は、土方の相談そっちのけで羊羹をかじっている。
「んで?具体的にどう被害にあってんだよ」
銀時は、羊羹を咀嚼しながら、やる気の見えない顔で言う。
これが実は、腹の中が怒りで煮えくり返っている銀時の、自己抑制の賜物だとは土方は知る由もなかった。
(ストーカーだとストーカーだと!?もしや土方のあんなとこやこんなとこを見てんのかごらあァ!!!!女でも男でもぶっ殺す!)
素直になれない銀時は、いつものような眼光のないぐったりした土方を極力見ないように、せっせと羊羹を食らう。
「…どこにいても尾行てきて、気配はねえが殺気みてえのが…。屯所には変な形したマヨネーズが大量に送られてくるし」
「…変?」
「その…アレの形の」
銀時が青ざめた。
土方はそれを伺いながら、気まずさに視線を外した。
「しかもそれ総悟に見つかって」
思い出したくもないおぞましい記憶に土方の背は粟立つ。
ダンボールいっぱいのその贈り物を呆然と見つめる土方の目を盗んだ沖田が隊士達にそれを振りかざし…
『おおいおめぇら、土方さんこーいう趣味があるらしいぜィ』
『ふ、副長ォォォ!!!?あんた何てもん買ってんですかァ!!』
『ば、ちげえ、それは誰かが勝手に…』
『ほれ』
『むが!?』
容赦なく口に射し込まれたそれを、沖田がずっぽずっぽと動かす。
『おぉごォ!へめえはひ…んぐっ、ぐ、』
『副長ォォォォォォ!!!』
異様な熱気を出す隊士達の雄叫びが渦巻くなか沖田にマヨネーズを飲まされ、挙げ句の果てには隊士の何人かにマヨネーズをぶっかけられるという悲惨なことになったのだった。
もちろん逃げた沖田以外は九割九分殺して来たものの、それ以来隊士の目までもがねっとりとしていて、屯所の居心地も悪くて仕方がない。
銀時と土方が付き合っていることは真選組内では周知の事実だが、水面下での土方人気は計り知れないものがあった。
もちろん土方はそんなことは知らなかったが。
「それもこれも全部ストーカー野郎の…」
「…ええええ!!!土方輪姦されたのォ!!?だからか、だから最近真選組の奴らが狼のような視線を土方に向けて…」
「されてないわァ!!!」
「いやされたようなもんだろうが!そんな!そんなことのために銀さんはアレを贈ったんじゃねええ!!!」
「…………は?」