リクエスト小説

□花殻
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 賞味期限、というのがある。

 人間にもそんな表示があるんだとしたら、こいつにとって、オレは期限切れなんだろうか。


 なんでも腐りかけが美味しいんだよ、といつか言っていたのを思い出す。


「…い、たっ…っ!」
「あー悪ぃ。たまってっから」
「理由、に、なって…な、あ、あっ、」
「だって土方くん、いきなり突っ込んでも絶対よがってんじゃん。…オレは便利で好きだよ?」


 奥まで突き上げられる久しぶりの感覚を、嬉しいと思っている自分。
 前戯の嫌いな万事屋のために、オレは風呂で孔を慣らすことにしている。
 入らなくて、途中で終わらせられるのが嫌だったから。


「あ、ああっ、く」
「あー。やっぱお前良いね。男ん中では一番良いよ」

 喜んでいいのか悲しんでいいのかわからない。
 万事屋がオレ以外の奴も抱いているのは知っている。女が大半で時々、男でも抱く。

 特定の誰かを決めない万事屋は、例外だと言ってオレを数回抱いている。
 本当に例外かどうかなんて知らないが。

「ァ、…っ、ろず、や、も、ゆっく…あ!」
「イイくせに」
「……っ」
「声我慢すんなよ、お前、いい声してんだから」

 低い声に促されるように、嬌声が漏れ出す。オレはこの万事屋の声が嫌いだ。

 いつだってオレに有りもしない希望をちらつかせて、奪っていく声。


「よろ、ずや、…は、も、」
「イきそ?」


 万事屋が煽るように大きく腰を穿ち、簡単にオレは果てた。
 朦朧とする意識の中で、まだ腰を揺すり続ける万事屋が見えた。この遅漏め。















 情事を終えると、万事屋は逃げるように安いホテルを後にする。
 誰が決めたわけでもないが、金はオレ持ちで、絶対二人一緒には出ない。夜中のうちに万事屋が出て行って、オレは朝を待って帰る。

 今日もそうだ。着衣の乱れなんてもともとあってないようなものだった万事屋は、簡単な支度を済ませるとベッドに寝そべったままのオレの腰を撫でた。

「悪ぃね、痛む?」
「別に…。いつものことだろ」
「かわいくねーの」
「いつものことだろ」
「まーね」

 じゃ、オレ帰るねーばいばーい、と軽薄な挨拶を残して出て行く万事屋の背中に、何か憎まれ口でも吐いてやろうと口を開くが何の音も出なかった。

 言いたいことなんて何もない。


 だってオレは棄てられるのを待つばかりの、期限切れの廃棄物なんだから。


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