リクエスト小説
□勇者の父親になるにはとりあえずビアンカ嫁にしろ
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銀時を後目に、土方はオイルで上から下までぐっちょりと濡れた隊服を申し訳程度に絞る。その程度で粘液は取れなかったが腹部を払っていると、隣の銀時までもが腹にべたべた触れて来た。
「うわ!きも!」
「キモいはどーなの土方」
「何してんだおいィ!」
腹部を隊服の上から後ろから抱えるようにして撫でていた銀時の掌がぬるりと素肌に触れた。
「オイルプレイってさあ…なかなかできなくね?よく考えたらさ、オレがここ来たのって土方くんと休暇を過ごすためじゃねえか。そしてしっぽり行くためじゃねえか。…つーことは今一発ヤっても…良くね?」
「良くねえェ!!一体何をよく考えてんだてめえは!」
「エッチについて本気出して考えてみた」
「その答えがすでに本気出してねえんだ、ちょ、うわっ!」
足場の悪い砂浜で銀時に後ろを取られた土方はあっさりと砂の上に転がされた。腹に跨られてぐ、と圧迫感に喉が鳴る。
「はいオイル土方くんいっちょー」
「っざけんな!」
自由な手で砂を銀時に浴びせかけるがそれも一笑に付される。
「据え膳喰わぬはなんとやらって?」
「…っ!」
土方は唇を噛んで笑う銀時を睨む。結局は体で繋がる、それだけか、とすこし虚しくなった。と同時に、絶対ここで事に及ぶわけにはいかないという決意。
「銀時…」
「んー?」
「…こんなとこでヤッたら、す、砂が、入るから、岩場いきたい…」
精一杯甘えた口調で言うと、銀時はいつもとの様子の違いにおののきつつも、岩場?と問うて来る。こくりと肯いた途端に銀時の腕が土方を抱えあげた。
「あらら、土方くん意外とやる気じゃん」
「うっせ」
土方を地面へ下ろした銀時は、逃げ出さないよう手を繋いだまま砂を踏んですこし高みにある岩場へと歩き出した。
岩場に銀時が足を踏み入れた瞬間、土方は素早く、本当に目にも止まらぬスピードで銀時にスライディングをした。
「うぎゃあ!!」
仰向けに倒れた銀時はオイルのぬめりに後押しされてつるりと岩肌を岸壁まで滑っていく。
「はっ!いつまでもオレが大人しくしてると思ってんじゃねえぞ変態天然パーマネンどわぁっ!、てめ、手放しやがれ!!」
「放すかァ!落ちる!ちょ、落ちるよひーじかたくーん!」
岩肌を滑りながらも繋いだ手を放さない銀時につられて、土方も転んで岩を滑る。
「知ってるわァ!アホかてめ…っ、一人で落ちて大好きなオイルと遊んでやがれ!!!」
「ここまで来てマスターベーションを推薦しますぅ!?つか下何気に滝っぽくなってるよ!?銀さん落ちるよ!?エッチできないよォォ」
「だからてめえ一人で…!」
「たまさまの体内で何を卑猥なことを言っておるかこの雑菌がァ!」
土方の叫びが最後まで行き着く前に、横を駆け抜けた影が、銀時の身体を思い切り蹴り上げた。一緒になって舞い上がる土方を掴んで引き止めたその人物は、断末魔の悲鳴をあげて滝壺らしきオイルの渦へ落ちて行く銀時を確認してから土方へ顔を向けた。
目が合ったその瞬間。
「よ、万事屋…」
「び、ビアンカ…」
驚愕に見開かれた目には同じく驚いている互いが映り込む。
「いや土方だよ」
「白血球王だ」
こうして二人は出逢ったのだった。
++++
深くなる前に離れた唇に、舌より深い何かを絡めとられたようで土方は無意識に額を相手の肩につけて息を吐いた。息が乱れるはずもない浅いキスだったのに土方の肩は上下する。土方の頭を撫でる白血球王は瞼を閉じて、うっそりと呟いた。
「ビアンカ…」
土方は押し付けた額を横に振った。
「違ェ…、オレは、お前が待ってた奴じゃねえよ」
「いや、お前はビアンカだ。異界より現れしタマ菌を持たない人間…まさにお前のことだ」
「た…ま菌?タマ菌て、お前も見えんのか?」
「当然。雑菌だらけの銀時の手がお前に触れるのは気が気で無かった」
白血球王の掌が土方の頭のまるみを辿るように撫でて、それから立ち上がり馬車を見渡す。
「ここなら着替えてもたまさまに知られることはない。オレは出ているから」
マントの下から白タイツを差し出した白血球王の、翳りひとつ、それこそ雑菌ひとつ無い笑みを向けられて土方は断ることも出来ずにそれを受け取った。
「あ、お、おう…」
「着替えたら、コピーについて説明しよう」
言い残して馬車を出た白血球王の姿が見えなくなってから、土方はその場に座ったまま頭を抱えた。
「タイツかよ…」
頬がとても熱い。
(つーか…)
握っているのが白タイツではお笑いだが、銀時なら絶対着替え終わるまでその場で凝視しているに決まっているのに、白血球王は馬車の外へ出て行った。その紳士的な振る舞い。
(調子狂う…)