リクエスト小説

□手は洗うよりアルコール消毒がいい
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「じゃあみんな、改めていつもごくろうさん、今日は目一杯飲んで…」
「かんぱああああい!」

 チャイナの音頭で乾杯する隊士たち。あーあー、近藤さんたら不憫でさァね。チャイナとメガネがいるってんで全裸も禁止されちまったもんだから目に見えてしょげちまってるし。
 あのケツ毛はむしりたくなりやすよねィ。手は絶対に触れたくないですけど。

 近藤さんの隣の指定席には土方さんが、慰労の会とは思えねえほど疲れきった顔をして座ってる。旦那がチャイナとメガネにかかりっきりで構ってもらえねえから寂しがってんですかね。おえ、気味わりィ。
 他の隊士がマッサージのあとだってんで溌剌としてるなかでは余計に悪目立ちしてるってことを、あの人ァわかってんですかねィ。

「おい土方コノヤロー」
「…あんだよ」
「何辛気くせえツラしてんでィ」
「してねーよんなもん」

 ちびりと酒を舐めるように飲む土方の顔色は、酒を飲んでも一向に冴えてきやしねえ。こいつァ風邪か、と思いきやどうもそうでもねえようで。オレははたとある可能性を思いついて、それからにんまりした。

「…なにニヤニヤしてんだおい」
「いえいえー、ぷぷ。そうでしたねィ、あんた潔癖の向きがありやしたもんねィ」

 ぐい、と酒をあおった土方さんがじとりとオレを睨む。

「…言うんじゃねーぞ」
「誰にですかィ?…ぷすぷすぷ。今日一日あんたは戦々恐々としてたってわけですねィ。ご愁傷様で」

 かわいそうな野郎でィ。オレも土方さんの前の酒瓶から直接杯に手酌をしてぐびりと飲み下すとぷっぷっぷっと笑ってやった。

「あーいまこのドエス野郎屁こいたアル」

 …屁じゃねェよ。

「なんでィチャイナ。ただ飯に来たんならおとなしく這いつくばって飯食らってろィ」
「はん、たいした食いもんねーくせによく言うアル。白い米とごはんですよない食卓に招かれたのなんて私初めてヨ!」
「んなもん用意して酒宴するアホがどこにいるでィ」

 土方コノヤローに背を向けてチャイナをからかう体勢に入って、ふと違和感を感じる。なんででィ、と思ったのも束の間。チャイナの後ろにいたはずの万事屋の旦那がいない。いるのはメガネだけ。いやあるのはメガネだけ。

「おいチャイナ、旦那どこ行った」
「うんこアル」

 なんでこいつはうんことかそういう単語が好きなんだかねィ。中二男子と見紛うばかりでさ。まあそれを言ったら、こんなにわかりやすく中座した旦那も、それを追いかけたくってたまらねえだろうに時間差つけようと平気な顔して酒あおってる土方コノヤローも十分中二なんですがね。

「銀ちゃん下痢ピーだって言ってたアル。だから私お酒飲むまえは胃を守るために酢昆布食べなさい言ったのに」
「逆に胃に悪いに決まってんだろィ」
「しかも銀ちゃんここのトイレの場所うろ覚えだから最悪庭でするってヨ」
「マジでか。そいつァ迷惑なこった。おい土方コノヤロー、あんた旦那の尻の穴ふさいで来てくだせえよ、いやあんた尻の穴ふさがれる方でしたっけかね」
「てててめっ、ガキの前でそういうこと言うんじゃねえよ!」
「へえ。ガキの前では言えねえことがあるんですかィ」

 にっこりと、もう自覚できちまうくらいに完璧なオレ天使スマイルを浮かべると、土方さんの顔色がさっと変わる。この人はほんとに、仏頂面のクセして感情がだだ漏れだからいけねえや。

「レディにむかって失礼なヤツらアル。わたしもう立派な大人ヨ。ノーブラとヌーブラの違いくらいわかるヨ」
「何の話でィ」

 チャイナがいると土方さんをからかうのも上手くいかねえな。わざとかこのやろう。
 まあ土方さんの部屋にゃあビデオまわしてあるし、後でゆっくりいじり倒してやりゃあいいんだけどねィ。もうビデオ売っちまおうかなー。売れねえかなー。あ、旦那は買うか。


 ビデオを一本幾らにするか、ちょっと真剣に考えすぎてたようで、土方さんが部屋出てく瞬間に嫌み言ってやるのを忘れちまいやした。
 あーあ。ケツの穴緩みすぎて慢性的な下痢になれ土方コノヤロー。あ、それちょいとおもしれえな。よし、今度土方さんに浣腸してくだせえって頼んでみやすか。


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