HighSchoolJump

□平日
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 高校生活がピンク一色です。薔薇色というよりピンク色。ピンク雑誌色。
 喜ばしいっちゃそうなんだけども、女の子かわいいしね、でもオレあんまり頭がからっぽな子って…いやかわいいんだけどさあ!

 あ、どうも坂田っす。入学から数ヶ月。今日も忙しく腰を振る毎日です。え?サイテー?サイテーだと?お前も抱いてほしいの?銀さんお前なら大歓迎ー。…うそうそ冗談だっつの(ぐりぐり)あ、良い匂い。香水?シャンプー?(くんくん)……なあに赤くなってんの(ぽんぽん)
 とまあこんなふうにして距離を縮めた女の子を食い散らかしておりまして。二回以上はやりませんが。一回ヤって会わないってなるとさ、女の子も多分プライド傷つくじゃん。だから二回。
 男子高校生には二種類のタイプがいる、と思う。童貞で女の子に幻想を抱いたタイプとヤリまくりで女の子に幻滅したタイプ。オレはまあ後者かなあ。幻滅なんていったら女の子に悪いけど、そりゃあ柔らかくて気持ちいとかかわいいとかあるけどセックスってこんなもんかよ、みたいな感じ。高校生なんて所詮処女ばかりなわけでほとんどマグロで、むしろその無反応さがウブで私かわいくない?みたいに勘違いした子がちょっぴり多い。

 本気で女の子を好きになったことのないオレだけど、女の子を大切にしようとは思ってる。大切にするやり方はよくわからないから、誘われたら抱いてあげるし泣いてたら慰めてあげる。オレが一体何をしたいのか何を求めているのかオレ自身もわからない。
 だから今日もよくわからないまま放課後、鍵の掛かる化学実験室で腰を振る。
 やわらかい女の子の太腿のあたたかさはすこしだけオレの求めているものに近い気がするから。

「坂田くん」
「んー?」

 ベルトをかちゃりと閉める。実験室の大きい机に寝そべったままのこの子は進学校によくいる、愛情と性欲を混同している子だ。女の子が性欲を持つって発想自体の乏しい、なんともかわいそうな子だ。

「学校の外では会ってくれないの」
「オレみたいなのと一緒にいると頭悪く思われるよ」
「なにそれ」

 くすりと笑った女の子は、頭が悪いと思われたいんだろうな。優等生として生きてきた今までにほんのちょっと嫌気がさしているんだろう。

「また話かけてね」
「当たり前じゃん」

 最後に教室を出る前にキスをすると至極満足そうに女の子は小走りに帰っていった。ちいさい背中だ。
 なんだか帰るのだりいなあ。セックスは気持ちいいけど射精後は喪失感がある。あほらしいけど。

(先輩元気かな)

 入学式で出会った先輩は学内ではちょっとした有名人で、(残念なことに同じクラスだった)生徒会役員の沖田に聞いたところによると生徒会副会長で土方十四郎といい、校則を遵守した厳しい罰則規定を作成した張本人で校内の問題児からの恨みを一身に引き受けているということだった。
 喫煙者なのにねえ。
 校内喫煙者の摘発の実績もあるらしいから、まったく世の中って理不尽なことだらけよね!と思う。

(会ってないなあ)

 一緒に掃除をした一週間も、その後も、オレは過剰なまでのスキンシップを試みたのに先輩はけっこう淡白だった。照れてみたのも最初だけで、あとは慣れたのかオレが近づくだけで殴るようになってしまった。

 手応えはあったんだけどなあ。

 実験室の机に座って窓の外を見ると、放課後の空はもう暮れそうだ。赤い色が部屋にも差し込んでいる。
 今日のバイトは八時から。
 学校と家のちょうど間に位置するバイト先には、以前大破したのを修理した原チャで行けばすぐだ。部活のない生徒の下校時間は六時で、それ以降学校に残っていると注意を受けるから六時には校内から出ないといけない。でも六時じゃあバイトにははやすぎる。

(まだ五時かあ)

 どこかで時間潰そう、と机から降りた一瞬、窓の外に、ちらっと。

(先輩?)

 窓に飛びつくと、三階の実験室の窓から見ると階下の、向かい側の校舎に先輩の黒い頭が見えた。

 これを運命と言わずして何が運命か!

 バッグを取るとオレは先輩の見えた所に向かって走っていった。


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