短編

□突貫!2周年☆
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それから2時間後―――

「不思議ですね、街に近づくにつれ動物がいない。何か仕掛けがあるのでしょうか」

ジンは紙で作りだした鳥で島を移動する。降り立ち、辺りを眺めるジンはある領域を境に、動物達が現れないことを不思議に思っていた。


「!!」

ザッ!!という音にジンは目を向ける。そこにはルンペンが立っていた。村からやってきたようだ。

「……貴方は?」

「お前は……“渡り鳥”クロスロード・ジンだな」

「!」

「おれは、政府諜報機関CPだ」

「!!CP……!?なぜここに」

「……。大人しく政府に来てもらおう。でなければ…」

「でなければ、なんです?」

一気に戦闘態勢に入るジン。ルンペンは至極静かな声で言った。


「手足をもいで、連れてゆく」

「!」

その言葉を言い終わった途端、ジンの視界からルンペンが消える。そしてジンの視覚になる右側面から現れた。

「“指銃(シガン)”!」

「(―――早い!)」

「“妨害行動(サボタージュ)”!!」


カンッ!!


「「!?」」

ルンペンの指が透明なピースに阻まれる。お互いの間に現れた透明なピースに二人は目を丸くする。
そして、ジンの目の前で、ルンペンが“突然蹴り飛ばされた”。

「!!」


――――ドカーン!!


大樹に激突するルンペン。その後ろには足をあげたアルトがいた。状況の読めないジンは、呆然とする。

「???」

「貴様……!!!」

「いい加減にしてくれない?」

ルンペンは砂埃を払うとアルトを睨みつける。アルトからアメをがりっと噛み砕く音が聞こえた。二人からは険悪な雰囲気が漂う。アルトはジンを見る。


「ああ。悪いね、キミ。大丈夫だった?」

「ええ。何かに守られたようで…怪我もなく」

「そう、それはよかっ……」

「“嵐脚(ランキャク)”!!」

「“軽率(レビティ)”」

カンッ!!ルンペンに鎌風が盾に相殺される。ルンペンは舌打ちをした。


「海軍ごときが、おれの邪魔をするな」

「海軍…!!」

ルンペンの言葉にジンはアルトに顔を向ける。アルトは表情一つ変えない。


「ごときねェ…。任務遂行第一なのはいいけど、時と場所を選びなよ」

「……」

「今は“そこの彼”より“伝説”だろ」

「……ッ」

「???あの、申し訳ございません。状況が読めないのですが」

二人の諍いの収まるタイミングを見計らい、ジンは声をかけた。アルトが改めてジンを見る。

「ああ、訳を話すよ。キミとならまともな会話が出来そうだ」

「は、はぁ」

「じゃあ、とりあえずあの村へ行こう。あそこには動物は来ないらしいからね」







ダフトグリーンに囲まれた村。

「おや、帰って来たのかい?」

「ああ、すまないね。ちょっと連れが増えた」

「構わないよ。じゃあ、ゆっくりしていってね」

「はい、ありがとうございます」

ジンは出迎えてくれた村人にニコッと笑って席に着く。村人が出て行くのを見届けてからアルトはその向かいに座った。ルンペンはドア近くの壁に寄り掛かる。


「それで、えっと…ノティ・アルトさん」

「アルトでいいよ。ジンクン」

「はい、ではアルトさん。先ほどのお話ですが…」

「ああ、僕とそこの彼もさっき聞いたんだけどね」

「―――その話、我らにも聞かせてもうおうか」

「「「!!?」」」

いつの間にかドアが開いており、そこに黒いローブをはおったレニーが立っていた。


「おっと動くなよ、若僧」

「……」

ドアにいたルンペンの首筋には白くもろそうな刀が添えられていた。
相手の強さが十分にわかるのか、言葉通り動かない。


「クロクロ〜。レ二ー氏って物騒だねェ!!」

(そうみたいだな。だが、“我ら”って言ってるからおれ達も共犯なんだぞ)

「おお!そうなっちゃうのか!!」

「少し黙らぬか、坊主共」

「は〜い、レ二ー氏ィ〜♪」

「「「……」」」

暢気なシロとレ二―の掛け合いに声に中いる3人は唖然とする。いち早く思考が復帰したアルトは頭をわしわしとかく。


「……驚いた。キミ達はだれ?」

「我らは半刻前にここに来た。村人に話を聞けば、我らと似た“珍客”がおると言うておったのでな」

「“珍客”…?」

「そうそう。みんなもサイクロンに巻き込まれたんでしょ?」

「「「!!?」」」

「サイクロン…!!皆さんもですか?」

「ああ。やっぱりキミもだったんだね、ジンクン。僕とそこのルンペンクンもサイクロンに巻き込まれてここに来たんだ」

「……そんな偶然が」

「ここまで来れば“必然”じゃ。さて、小僧。主が知っていることを話すがよい」









シロとクロ。レ二ーを加え6人となった。アルトはルンペンと共に聞いたことを話す。
この島“メルヴィユ”という島であること、この島の現状、そしてその要因が“伝説の大海賊 金獅子のシキ”であること、などだ。


「―――ということだ。これが僕とルンペンクンが聞いたこと。合ってるよね?」

「……」

ルンペンは目を瞑り無言で首肯をした。レ二ーはため息をつく。


「シキの小僧か……奴はやっかいなことしかせぬな」

「?貴方はあの“金獅子のシキ”さんを知っているんですか?」

「?何を驚く。知らぬ訳はあるまい。あの小僧とはウッドエー逢うたばかりじゃ」

「「「!!?」」」

「あの小僧は、ロジャーに傘下に下れと喚いておったが、あの嵐で生き延びるとは悪運は強い様じゃ」

「!待って。…ウッドエーに金獅子とロジャーって…。まさか、ウッドエー海戦のことかい?」

「?すでにそのような名で呼ばれておるのか」

レ二ーはアルトに尋ねる。ドアの前に立っていたルンペンは腕を組み、呆れたように言った。


「……何を言っている。ウッドエー海戦は15年前の話だ」

「15年前……?20年以上前ではないのですか?」

「?」

「……」

ジンは首を傾げる。アルトはルンペンを見た。


「レ二ー氏ィ…」

シロは心配そうにレ二ーに声をかけた。レ二ーがシロに頷く。


「ああ、どうやら我らの考えは当たったらしいのォ」

「?考え、ですか?」

「ああ、我らは“別の時の中で”生きておったのではないかと言う仮説じゃ」

「「「!!!」」」

「……仮説だと…?」

「うん。この仮説はね、クロが考えたんだけどね」

「クロ?クロって誰だい??」

「ああ、そっか。挨拶してなかったもんね!ちょっと待って」

シロはそういうと目を瞑る。すると黒かった髪がみるみる白くなり、鋭い目つきの少年になる。


「おれが、クロだ」

「「「!!」」」

「……(気配が別人になった)」

「不思議な体質ですね。能力者ですか?」

「いや。おれとシロは元々こういう体質だ」

(ボクらは二人で一人なんだ♪)

「……。小僧、話を」

「ああ。今、アンタらも思っただろ。“話が合わないって”。現にこのおっさんは、あの海賊王、ゴールド・ロジャーの船にいた。」

「レ二ー……。まさか貴方が“伝説の吸血鬼”レ二ー・レニゲイドさんだと?」

「“伝説”になった覚えはないがのォ、我が名は主が言った通りじゃ」

「……」

「―――なるほど、やっぱり。そうなんだね」

「?」

アルトが言った。レ二ーは目を向ける。

「なんじゃ、小僧」

「小僧じゃない、僕はアルトだ。…っとまぁ、そんなこといいけど…」

そう言うとアルトはルンペンに目を向けた。


「さっきは迷ったけど、仮説が証明されたとみるから話すよ」

「……?」

「僕の知っている限りでは、ルンペンクン、キミはもうCP9にはいない」

「!?」

「…僕が海軍に戻って少ししてからライク・ルンペンは“戦死扱い”になっている。現に僕が知っているCP9はロブ・ルッチ率いる7人だ」

「……」

「そうそう僕も、アルト氏を知ってるけど…」

いつの間にかシロの人格になったシロはアルトに言う。


「僕が知ってるアルト氏は大将さんだよ」

「大将…!?」

「うん」

「それは、おかしいな。僕は中将だ」

「…あのルンペンさん、僕を知ったのはいつですか?」

ジンはルンペンに尋ねた。ルンペンは渋々答える。


「…任務を受けたのは1カ月前、お前の逃亡を受けての追跡調査だ」

「……。合いませんね、確かに」

「?」

「僕が政府の手を逃れたのは約1年前です」

「……」

「―――フム。我々は皆一様に別の時間で生きているということで決まりのようじゃ」

「そのようだね」

「不思議だねェ〜」

(ああ。なぜ同じ時期に同じ場所に…)

「これは、調べてみる必要がありそうですね」

「そうだね!!」

「ならば話は早いのォ」

「……“金獅子のシキ”か」

レ二ーとルンペンの言葉にジンが頷く。

「ええ。この“メルヴィユ”に僕らが来たということは少なからず“金獅子のシキ”さんが関係しているとみて間違いないでしょう」

「いつの世もあやつは人騒がせな小僧じゃ」

「ふふ。ほんとだねェ〜」

(お前、シキに会ったことないだろ…)

「へへへ〜そうだったァ♪」

レ二ーは立ち上がる。シロはそれに続き部屋を出る。シキのいる城へ向かうのだ。


「……」

ルンペンはジンをじっと見る。アルトは板チョコを取り出し、封を開けた。


「構わないだろ?ルンペンクン。別次元の人間なら“任務外”だ」

「……元の世界に帰ることが優先されただけだ。まだ任務は終わっていない」

ルンペンはそういう言いきると、部屋を出た。アルトは肩をすくめる。


「はぁ、仕事熱心だねェ」

「フフ……」

「ん?」

ジンの笑い声にアルトが振り向く。

「いえ。時を超え出逢った者たちが、同じ目的で動く…なんだかとても不思議な縁だと思いまして」

「―――“世界には偶然というものがある。だが、その偶然が無ければ今はないかもしれない”」

「え?」

「確かそんなことを書いている本があったなと思ってね」

「素敵な言葉ですね。まさに僕らのことを指すようで」

「ああ。せっかくだから楽しもう。相手は“伝説”、やりがいはある」

「ええ。ぜひ派手に参りましょう」

ジンは綺麗な笑みを浮かべる。アルトは板チョコを一口かじると、部屋を後にした。







偶然と言う名の必然の出逢い。

この出逢いは彼らの心に残り続ける。





fin
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