裏パラ
□例え全てに背いても
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「――本当、みんな大袈裟なんだから…、」
広い寝室の中を、所狭しと埋め尽くす大小様々なプレゼントの数々。
花や果物、お菓子にワインに調度品、書物、衣類、装飾品などなど。
実はまだまだたくさんあるのだが、全部は入りきらないので隣室や廊下にまで溢れている。
これらは全て、世界中から集まった綱吉へのお見舞い品だ。
それらをチラリと横目で見て、綱吉は肩を竦ませる。
「それだけ大事にされてる、って証拠だ…、」
そう言って、ベッドに身を起こした綱吉に寄り添うのは、黒いスーツに身を包む柿本千種。
口ではフォローするも、少々うんざりした視線で室内を一瞥した。
ちなみに今回千種は、怪我をした綱吉のお世話をする係りとして、リボーン直々に抜擢。(結果他の守護者から大ブーイングを喰らったが、本人は何処吹く風)
ボディーガードとして寝食を共にする傍ら、着替えや入浴の手伝い、怪我の手当てなどをしている。
「うーん、どうでしょう、」
小さく息をつく綱吉は、羽織っていたパジャマの上着をおもむろに脱ぎ捨てると、同じベッドの縁に腰掛けている千種に背を向けた。
その綱吉の左肩に痛々しく巻かれた白い包帯を、器用な指先で丁寧に取った千種は、傍に置いた薬箱から大きなガーゼを取り出す。
「…綱吉の身にもしものことがあったら、きっと世界は崩壊する、」
淡々とした口調で恐ろしい話をする千種の声色は、抑揚なくて感情が見えない。
決して深くはないが、確実に痕を残すだろう綱吉の傷口に内心舌打ちして、消毒液を浸した脱脂綿を軽く押し付けた。
「え、世界って……そんな馬鹿な話、――んッ、」
少し沁みたひりつく痛みに、綱吉の華奢な身体が揺れる。
「そりゃ、こんな大きな組織…『ボンゴレ』を取り仕切る『ボス』に何かあれば、それなりに大ごとにはなるだろうけど…、」
世界とまでは行かないが、裏社会に混乱をきたすのは必至。
だがしかし、千種の言いたいのはそういう話ではない。