裏パラ

□例え全てに背いても
5ページ/7ページ


 答えは否。



 まぁ、要は己の理性の問題なのだから。(超・切実v)





「…わかった、支度するから…少し待って、」

 綱吉のふわふわ揺れる髪を一つ撫で、穏やかな笑顔の裏に一大決心を隠した千種は、薬箱を手に綱吉の寝室をあとにした。




 ☆☆☆☆☆☆☆




 それから約30分。



 照明の落とされた薄暗い室内に、静かな規則正しい寝息がかすかに聞こえてくる。




 ただし…一人分だけ。




 アンティーク調のキングサイズベッドに丸くなる綱吉は、それはそれは安らかな顔で気持ち良さそうに眠っていた。


 ――傍らにいる千種を、手ごろな抱き枕代わりにして。




 肩の傷がまだ痛む綱吉の睡眠スタイルは、うつぶせ寝が一番楽な体勢なのだ。

 なので、寝つきがよく眠りの深い綱吉は、仰向けに寝ている千種の胸に上半身を預ける形で乗っかったまま大爆睡。




「……;」


 おかげで千種はまんじりともせず、眠れぬ夜を過ごしている。


 これでは動きたくても動けない…まさか今夜一晩中、この状態でいろと?




 一体何の試練だというのか;





 でも。





 薄い布越しに感じる体温、身体にかかる適度な重みが心地良くて愛しく感じるのも確かで。


 そうかと思えば、千種の開いた寝間着の胸元鎖骨部分に、綱吉の柔らかい唇が触れているのがかなり気になる。


 しかも位置的に、綱吉の濃いハニーブラウンの甘そうな髪に自身の頬が埋もれ、仄かに漂ってくるシャンプーの香りがかなり扇情的で心がざわめく。




(そういえば…、)

 今日の夕方、綱吉の入浴を手伝う際に自分がこの髪を洗ってやったのだと、とりとめのないはずのことを不意に思い出した。




 そうなると頭を過ぎるのは、大理石の浴室に射した夕日に映える光景。


 湯船独特の湯気の匂いと、浮かべたソープの泡の淡い感触。


 薄く桜色に上気した綱吉の白い肌にしたたる、幾筋もの細い水滴…。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ