朧月夜の舞

□朧月夜に優美な舞を...弐
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「将臣殿? 起きていらっしゃいますか?」



中に控えめに声をかけるが、返事はない。



「将臣殿?」

「ん…? あぁ、朧か…」



もう一度声をかけると、微かに返事が聞こえた。

安堵した朧は静かに御簾に手をかける。



「失礼しますね」



そっと御簾を捲り、中を覗く。

中では将臣がぐっと背伸びをしていた。

どうやら起きてはいたようだ。


それを見た朧は呆れたようにため息を吐いた。



「お目覚めでしたら、こちらへ来てくださればよろしいのに…」

「あぁ、悪いな。少し夢で…あいつに会ってたんだ」



将臣は掛けてあった自分の服を取り、隔てられている部屋の奥に入っていく。

朧は中に入ると御簾を下ろして、そこに音もなく座った。



「あいつ…とは、こちらに来るときに離れてしまったという?」

「その幼なじみだ。あいつも今、この京にいるらしい」

(京にいる…?)



朧は目を見張った。


まさか、その少女は人々が待ちに待っている存在では。

今までの自分の経験からすると、異世界よりやってきた少女は、白龍の―――。



「で、約束したんだ。こっちで会おうってさ」



そこまで言うと、将臣は奥から姿を現した。

いつもの服装に着替えた将臣は、にっと笑って言った。



「おまえも行こうぜ。紹介したいしな」



嬉しそうな将臣のその様子に、首を横に振れるはずもなく。



「そうですね。お供します…」



朧は控えめに頷いて返した。






   ***






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