朧月夜の舞
□源氏の章
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源氏の章
源氏と平家の和議は成った。
枷は消え、あの悲惨で過酷だった戦は終わりを告げたのだ。
「朧、大丈夫か…？」
上からかけられた声に、朧はゆっくりと瞳を開けた。
自分を心配そうに見つめる九郎の姿がそこにあった。
「九郎…殿…」
朧は弱々しくその名を呼ぶと、九郎はそれに答えるように朧の肩に手を回してそっと抱き起こした。
「終わったな…」
「…ええ」
朧は九郎の手を借りてゆっくりと起き上がった。
そのまま辺りを見回せば、荼吉尼天は疎か陰の気さえ消え去っていた。
朧はそっと微笑んだ。
「本当に、よかった…。」
舞い散る桜の花弁の中、朧は目を閉じた。
＊＊＊
「実に見事じゃった、平朧姫。」
「はい。ありがとうございます」
後白河院に呼ばれその前に跪いた朧は、頭を垂れた。
従順な態度の朧に後白河院は満足そうに笑うと、ふと何かを思い出したように声を上げた。
「そうじゃったそうじゃった。危うく忘れるところじゃった」
言いながら後白河院は朧を見下ろす。
「そなた、九郎とは叶わぬ仲だと申しておったな」
「は…はい…。左様にございます」
意外なその内容に、朧は目を見張った。
すると、後白河院の口からとんでもない言葉が飛び出した。
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