朧月夜の舞

□平家の章
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「平家の養女ならば…平家一門との血の繋がりは皆無、ということじゃな?」

「…はい、左様にございますが…」



何故今更そんな話をし始めるのだろうか。


朧は何か嫌な予感がし、身を震わせた。

やがて後白河院はとんでもないことを口走った。



「朧姫よ。平家一門の名を捨て、入内せよ。」

「なっ…!?」



朧が目を見開いた。


平家の名を捨てろ。

そう言われたのは初めてだった。



「で…ですが、私は…っ」

「平家の血が通わぬ娘を、恨む者も出てくるであろう。もしもそのようなことがあれば、そなたが命を奪われることもある。」



朧が口を閉じる。

後白河院は更に言葉を加えて言った。



「それに…平家にも悪しきことが起こるやもしれぬ。」



その後白河院の言葉に、朧は息を飲んだ。


確かに、これからの平家の繁栄を思えば一族の血が通わない朧を妬む者も少なからず存在するだろう。

そうすれば、何れ平家一門にも害がでる。


後白河院の言うことも、最もだろう。



「…少し、時間をいただきとうございます。後白河院…」



朧はもう一度、深く頭を垂れた。






   ***






源氏と和議を結んだ平家は、引き続き福原に留まることになった。


そして和議が成ったこの夜。

平家の邸では小さな宴が催されていた。






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