下弦の月
□華の声、咲くか 散るか…/序章
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弁慶は淡く微笑むと、赤みがかった空を見上げた。
「少々疲れてしまった我々への配慮でしょうか…、それとも…」
「…何が言いたい?」
九郎は不機嫌に弁慶を見上げた。
弁慶は悪戯に笑って言った。
「君がいつまで経っても独り身だから、鎌倉殿も心配になったのかもしれませんよ?」
「弁慶!」
「冗談ですよ」
クスクス笑いながら部屋から出ていく弁慶を見送る。
きっと旅の支度をしに行ったのだろう。
悪友を見送った九郎は、簡単に荷物をまとめる為、杯を畳に置いた。
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