下弦の月

□華の声、咲くか 散るか…/序章
3ページ/8ページ




弁慶は淡く微笑むと、赤みがかった空を見上げた。




「少々疲れてしまった我々への配慮でしょうか…、それとも…」

「…何が言いたい?」




九郎は不機嫌に弁慶を見上げた。


弁慶は悪戯に笑って言った。




「君がいつまで経っても独り身だから、鎌倉殿も心配になったのかもしれませんよ?」

「弁慶!」

「冗談ですよ」




クスクス笑いながら部屋から出ていく弁慶を見送る。



きっと旅の支度をしに行ったのだろう。


悪友を見送った九郎は、簡単に荷物をまとめる為、杯を畳に置いた。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ