下弦の月
□華の声、咲くか 散るか…/序章
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九郎は源氏、主に弁慶と景時を連れて望月の夜の日、鎌倉に着いた。
奉公人に案内され、通されたのは庭にある舞殿が見える、でも小さな部屋だった。
中に入ると頼朝の姿があった。
だが、政子の姿はない。
久しぶりの兄との再開だった。
と言っても、形ばかりのものだが。
九郎は膝を付くと、兄に頭を垂れた。
「お久しぶりです。兄上。今宵は…」
「九郎、堅苦しいあいさつはよい。」
九郎が言い切る前に、頼朝はそれを制した。
「今宵は、この源氏に仕えた白拍子の舞をおまえ達に披露しようと思ったのだ」
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