FE短編BL
□二人の誓い
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そんなつもりじゃなかったんだ。
頼むから、なぁ。
オレの前で、そんな寂しそうな目で見つめ合わないでくれ。
オレの前で、仲良くしたりしないでくれ。
オレに、お前らの絆を見せつけないでくれ。
死んでくれてよかった。
……つい、本音が出ちまったじゃないか。
＋＋＋＋＋＋
きっかけは本当に些細な事だった｡
スマブラ界・ピーチ城。
いつものようにロイとヘクトルが、エリウッドを取り合って争っているたわいもない光景。
「いいっ加減エリウッドに付きまとうのやめろよなヘクトル！ 邪魔だ！」
「付きまとってやがるのはそっちの方だろうが！！
俺とエリウッドの仲を邪魔してんのはお前だ！！」
「……君達は僕のお茶を邪魔してるのに気づかないのかな？」
ゆっくりお茶を楽しんでいたエリウッドには、いい迷惑だった。
周りのスマブラファイター達も呆れ顔で、だがそろそろ名物になって来ているケンカを微笑ましく見ている。
あったらあったで騒がしくて鬱陶しく、
無かったら無かったで静かで物足りない。
もはや半ば見世物になっている事に気付かず、
ロイとヘクトルのケンカは止まる事が無い。
「オレはっ、オレはなぁ、本気でエリウッドの事が好きなんだぞ！！」
「……いや、ロイ。皆の前で告白タイムを始めないで貰えるか？」
周りの仲間達はクスクス笑いながらエリウッドを見ていて余りに恥ずかしい。
いい加減に諦めろとロイへ言うファイターもいるが、
ロイは絶対に諦めようとしなかった。
エリウッドとヘクトルは、１０年来の親友同士だ。
幼い頃、お互いを命を懸けて護るとの約束を交わした比翼の友。
どう見てもつい数ヶ月前に知り合ったばかりのロイの方が不利だ。
しかしロイは、エリウッドと過ごした時間の長さなら自信がある。
彼はエリウッド達の時代の２０年後からやって来た、エリウッドの実の息子。
エリウッドとヘクトルがいくら１０年来の親友とは言え住む場所は国の端と端、滅多に会える距離ではない。
学問所を卒業してからは２ヶ月に一度の手合わせを決めて会っていたのが良い例だ。
それに２人は、貴族である家を継いでから１５年も会っていない。
そして１５年振りの再会から５年後、ヘクトルは…。
それに引き換え、ロイは産まれてから殆どの時間を父であるエリウッドと過ごしている。
母が早くに亡くなった分､かなり父に甘えていた。
「昔っから、エリウッドは俺と一緒に居るんだ。お前じゃ勝てない。無理無理」
「……そんなの関係無い！」
関係あるんなら、オレの方がずっと……。
「エリウッド、お前がハッキリしてくれよ！」
「え……」
ロイの怒りが突然自分に向けられエリウッドは困惑した。
ロイはそれを分かっているのか、畳み掛けるように言葉を続ける。
「オレとヘクトルと、どっちが好きなんだ！？」
お人好しなエリウッドには少々辛い質問だ。
ここで彼が答えを濁してくれたら、どんなに自分は救われるか。
しかし、そんなロイの考えはあっさり覆されてしまった。
「どちらか片方……１人だけを選べと言うのなら、僕はヘクトルを選ぶ」
分かってた事じゃないか｡
今のエリウッドにとってオレは、最近会った仲間ってだけの存在だ。
昔から絆を深めていたヘクトルの足元にも及ばない存在だ。
エリウッドとヘクトルの絆は深い。
お人好しで人を気遣うエリウッドが、きっぱりとヘクトルを選べる程に｡
だから、オレは我慢出来なくなったのか。
どう足掻いてもヘクトルには勝てやしないから。
「……癖に」
「ロイ……？」
「どうせヘクトルなんか、エリウッドの知らない内に死ぬ癖に！！」