虹色譚詩
□塞翁が馬
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『今日はついてない。』
一言で表すならそんな言葉が当てはまるだろう。
今朝は寝坊をしてしまい、いつもならきちんと食べている朝食を食べ損ねたし、そのせいで胃はスカスカな為に先程から早く食べさせろ。とばかりに訴えてくる。
だが昼休みまでまだ数時間はあるからこの胃が直ぐ満たされることはない。
結局は朝ご飯まで抜いて走って学校まで来たと言うのにその頑張りも虚しく間に合わなかった。しかも教室へ向かう途中でたまたま会ってしまった風紀の顧問、島田先生にスカートが校則より3cmほど短い。と注意を受けて。
そんな細かい事をグチグチと言うからいつまでたっても独身なんだっ!と言ってしまいたいがそんな訳にもいかず、先生の機嫌を損ねないよう注意を払いながら「今度から気をつけます。」と言って逃げる様にその場を去った。
心の中では「一族全員禿げてしまえ。」と毒付きつつ。
夕方も近くなった今は第2の空腹が襲いぐぅ、と情けない音をお腹から響かせるも両手に荷物を持っている為にお腹を押さえる事も出来ない。
本当に今日はついてない。
改めてそう思わせるのは私の両手にある荷物のせいで。
なんで私が、と思う。
両手一杯のプリントに数冊のノート。極めつけは二の腕にズッシリとくる歴史の地図だ。
やっと苦手な勉強から解放されて、しかも今日は部活もないからさあ帰ろうと思ったときに又タイミング悪く、次は歴史の先生に捕まったのだ。
しかも相手はこの学校で1、2を争そう程にイケメンと評される先生だから凄く断わりずらくて、ついOKを出してしまった私は悲しい程になんて単純な性格なんだろう。
「よいしょっと。」
ちょっと年寄り臭いかな、とは思いつつも荷物を持ち直すとき無意識の内にそんな言葉が出てしまうのも仕方がないと思う。
確かこの手に持っている物を全て資料室に運べば良いだけだからあともうひと頑張り。
そう思って再び荷物を持ち直し階段を降りようとしたときキラリと光る何か。
「なに、あれ?」
キラキラと光る物は硝子だろうか?目を細めてもっと良く見ようと少しだけ身を乗り出すが抱えているプリントが邪魔でよく見えない。
それでも幾らか近付いてやっとその正体が分かった。
「石?」
言葉にした通りそれはまごうことなき石。
でもその辺に転がっている普通の灰色の石ではなく、青みがかっている。