ぽかぽか行進曲

□神様からの贈り者、
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なに、あれ?

小さな頃に両親を亡くして、早15年。

当時はまだ2歳とあまりに幼い私を引き取り育ててくれたのは父方の祖父母。

そんな祖父母は高齢だったからなのか、もうすぐ高校卒業を間近に控えた私の姿を見て安心したからなのか二人揃って仲良く旅立った。

もちろん悲しかったし寂しかったけど其れだけではこの先、生きていけない。

ありがたい事に祖父母は自分達の先が長くは無いと知っていたのか僅かだが少しのお金を残していってくれたし、私も年金生活だった二人にあまり負担をかけたくなかったからバイトで貯めた貯金が雀の涙程度だけどあったから、そのお陰で今まで一人暮らしをなんとかやってこれた。

そんな貧乏女子高生の家は6畳の部屋と4畳半の部屋。勿論、両部屋は畳だ。それにシャワーが付いていない小さなお風呂にお湯が出ない台所。極めつけは気をつけないと時々詰まってしまうトイレ。

そんな典型的なボロアパートが我が家なのだが、学校から帰ってきて一番最初に目に入ったのは遅刻しそうだった為に畳む時間がなかった敷きっぱなしの布団。

パジャマも放りだしたままの部屋はお世辞にも綺麗、とはいい難い。
汚いのはこのさい置いといて。問題は敷きっぱなしの布団の上にある、今朝は無かった異物。
パシパシと瞬きをするもそれは消えず、目を擦っても消えない。

「…なに、あれ?」

その疑問に答えてくれる人は居らず、虚しく空気に溶けた。

陽も落ちかけた時間帯の今は満足に光が部屋の中に入ってこず、布団の上の物体がよく見えない。

このまま玄関に立ちっぱなしというのも埒があかないので、恐々とだが足を前に進めた。

こんなとき人間と言う生き物は好奇心には勝てない。

「…服?」

何か恐ろしい物を想像していた為に体から力が抜ける。
だが、その服は一着ではない。しかも何だかそれぞれの服が派手な色をしていて、今の時代にこんな服を着れば皆の注目を集める事は間違いないだろう。

なんで服が?

もしかして泥棒に入ったは良いけれど、あまりにも盗れる様な物が無かった為に同情した泥棒さんが着ていた服を脱いで「これでも売って美味い物でも食べな。」という意味を込めて置いていったのだろうか?

それも集団で?
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