過去拍手
□フリー
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アタシは雨女。
昔から試験や旅行、イベントごとはだいたい雨。
出先で降られることなんて当たり前。
折り畳みなんていう甲斐性もないから私の家には一時凌ぎに買ったビニール傘がいっぱい。
そのくせ朝から降っている時に限って一本もありゃしない。
「あ。」
時たま見かける駅忘れ物市。
大半が傘を占めるのはアタシと同じ人がそれだけ沢山いるということ。
誰が使っていたか判らない使用感のある傘たち。
乱雑に積まれたその中からどうして見つけてしまったのだろう。
「・・・・・・。」
花柄ピンク。
なんの変哲もない傘。
でもアタシには特別だった。
『大事なものならなくさないだろ?』
傘の消費を見かねた彼氏が、少し頬を染めながらそう云ったのは昨日のことみたい。
でも今のアタシは一人。
アイツに振られた時に電車の中に忘れてきてしまった。
「安いなぁ・・・。」
値段は二束三文。
でもこれをさして歩いた思い出はもう買い戻せない。
「すい「すいません、これ下さい。」
そこにいたのは。
『大事なものなくすな、バカ。』
終