☆SHORT STORY☆
□☆指
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☆指
「私にもひとつちょうだい。。」
心地よく酔っ払ったわたしの耳に柔らかなボイスが届いた。
ソファーの隣に座ったチカさんの手が、す〜っと私の前に差し出される。
わたしが持ってる缶の中には、チョコレート。
そんなに高級なものではなく、
レーズンを甘さ控えめのミルクチョコでくるんだとても単純なもの。
今、このチョコとレーズンのハーモニーがふたりともとても気にいっていて。
食べだすと、とまらない。
あるデパ地下の有名ではないお店で偶然見つけて、
時々買ってはふたりでおつまみにして楽しんでいる。
手のひらにチョコを乗せようと見た時。
チカさんの中指と薬指が、下から上にきれいなカーブを描きながら。
ほんの少しだけ曲げられた。
そのさりげないのに優雅な動きと。
丸く内に弧を描いた指も含めた手全体の、
あまりの美しさと完璧さに。
思わずじっと見詰めた。
そして。
無意識に。
その細くて長い指と手のひらに、触れていた。
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