☆SHORT STORY☆

☆うそ
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東京公演の楽の後、打ち上げを終えて、
かなり遅い時刻に部屋に帰って来た。

鍵を開けて。
ドアを開いた瞬間に。
なにかふんわりと空気を感じた。

、、?

とっさに、足元を確認したけれど、どこにも頭に浮かんだものは見当たらなかった。

打ち上げで心地よく酔っ払っているのもあり、
自分の心の願望がそんな空気を感じさせたのか、と、
苦笑した。


リビングに入り、やはりもう一度、望んでるものを無意識に目で探した。

けれど、靴がなかったのだから、いるわけはない。


上着と鞄を無造作に投げ出し、ソファーに深く座る。
そのまま、背もたれに身体を預け、目を閉じた。

大阪がまたあるけれど、
少し長かった公演に、
自分が思いの外、疲れている事実に気がつく。
公演中は気が張っているので、そのことにも目がいかなかったりする。

宝塚時代に比べて踊っている訳ではない。
けれど。
今回の舞台は精神的に大きく揺れ動く。
そのような役は、女を演じるということとは別に、ほぼはじめてだ。
宝塚時代の役は、どちらかと言うと、感情を抑えることが多く、
揺れを表現することはあまりなかった。

そして、その揺れ幅や方向は、日々相手の演技にもよって変化する。
自分のコンディションや、感じ方にもよって変化する。
それが、今回の舞台の面白いところでもあるが、疲れも、その分、多く
そして、深くあるようだ。


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