☆LONG STORY☆

□☆時計 T
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「ゆみこ」

お稽古の隙間を縫ってこっそりと声をかけた。
始まりから、ずっと声をかけようとしていたけれど
なかなかタイミングがなく、ようやくだ。

私はやはり一番出番が多いし、
1番手2番手なので
ゆみことは一緒に出てるか、私が出てなければ、ゆみこが出てる。

娘役の群舞のシーンのお稽古に入り、やっと話しかけられた。

まぁ、ハマコやテルはチェックしてるだろうけれど。
とりあえず見られてても聞こえなければよいか。



「なんですか?チカさん。」
「ゆみこの部屋に、時計忘れてなかった?
 あると思ってた引き出しに入ってないんだよね。」

脳裏にチカさんのきっちりと整理された引き出しが頭に浮んだ。


「どんなん?」
「ベルトは黒くて、文字盤はシルバーでちょっと大き目の」
「う〜ん。特には気がつけへんかったよ。」
「そうかぁ。ゆみこの所にはないか。」

そこまでもひそひそだったけれど、ちかさんはいっそう声をひそめて
「ゆみこんち行ったの、もうずいぶんと前だもんね。」と
ため息まじりに言った。

ふたりともあまりに忙しくて部屋での甘いひとときはずっとお預けだ。


「お気に入りの時計?」
「うん。まぁ。」
「もう手に入らへんの?」
「ううん。店もわかってる。」


あっと言う間にチカさんのダンスシーンがやって来た。
大勢の娘役に囲まれた、ハーレムのようなダンスシーン。

お稽古場でもチカさん、お色気全開だなぁ。。
衣装着てないのに。
いやだからこそ、かな。

.

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