沖田総受1
□無邪気な子ども(完結)
1ページ/8ページ
「ねーねー旦那」
今日も今日とて泣く子も黙る真撰組一番隊切り込み隊長の沖田くんは無邪気にすりよってくる。
「のど乾いたんでい。なんかないですかィ」そういって冷蔵庫を開ける。ちょっとここ人んちですけど。万事屋。相変わらず奔放だねえ。
「あのねーここは茶店じゃないのーお仕事の途中でしょ。沖田君、さぼってばっかじゃマヨラーの上司の血管きれちゃうよ。」
軽くいなせば
「だってー外は暑イいし。旦那の顔みにきたんだもんねえ」唇をとがらせて答える。
ちょっと、かわいいじゃないの。
最後の俺の顔云々は絶対本気じゃない。でも正直嬉しい。沖田くんがこうやって仕事の途中に万事屋にやってくるのが実はとっても楽しみだ。今日は神楽も新八も居ないし、沖田君と二人きりと思うと年甲斐もなくときめくこまった事だ。
最初は興味本位だった。
あの真撰組で一番隊長をしている名だたる沖田総悟。剣の腕は他の追随を許さない。あってみたらおめめぱちくり白い肌に桜色の唇 ほんのり桃みたいな頬のビクスドール。
いやでも、見た目だけならなんてこたあない。単なる美少年だ。銀さんはお稚児趣味はないからね。綺麗なだけなら女でいい。
その傍若無人とも言える奔放さ。でもそれは繊細さともろさの裏返しで、強がりでいじっぱりで寂しがり屋で…。
たった一人の身内のミツバが亡くなったときもしゃんと背筋を伸ばしてた。気位の高さと気骨。でも陰で泣いてる。傷つきやすい子供。手をさしのばさずには居られない危うさがある。でも銀さんの手なんてつかんではくれないけど。
「ねーだんなあ」
無邪気にすりよるこの子供。困ったもんだ。男の欲望なんてしりやしない。
黒の隊服はきっちりのど元までスカーフで隠されていて逆に禁欲的な感じがエロティックだと思うのはかなりきてるんだろうか。
「でさあ土方のヤローがさあ」
またあのマヨラーの話か。
沖田君は意識してないけれど、土方のくそヤローの話をしているときが一番生き生きしている。
…くそっ。
武州時代からそれこそ沖田君のちっちゃい頃から傍にいるんだ。一緒にいる歴史がそれこそ違う。時間で考えたら完璧負けだ。
でも。
俺は知っている。あの土方は沖田君に手が出せない、なぜなら一緒にいる時間が長いほどその重みが理性のストッパーになるんだ。
…だいたいこの無邪気な様子を前にしてどうやって手をだすってんだ。
そこまで考えて俺は深く息を吸い込んだ。