沖田総受1

□無邪気な子供2 (前編)
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「というわけで見回りを強化する。最初に」
土方さんが前で皆に檄をとばしている。

真撰組の集まりで一番隊長の俺は周りの引き締まった顔を見ながらぼんやりと考え事をしていた。

『また…おいでね。沖田君。銀さんまってるからね。』

なんであんなことになっちまったのか。というかなんであんなことしちまったのか!

自分の痴態を思い出すとかっと頬を燃える。あれから万事屋にはいってない。どういう顔でいけばいいのかわかんねえ。


「以上!解散!」
土方さんの力強い声にはっと我にかえった。

「どうしたんだ。ぼうっとして」
土方さんが煙草をくわえながら俺の横にきた。

「お前 この間俺が出てた夜、外泊したってきいたけど」
「あーあちい!」
俺は大きい声で土方さんの話を遮った。


「近藤さーん。なんでこの隊服って暑苦しいんですかい。もうちっとなんとかなりやせんか。」
と近藤さんに話を振ると
「あー確かにあちいよな。でもこれかっこいいじゃないかー」
と暢気な返事がかえってきた。


にこにこと太陽みたいで、安心する。大好きだ。近藤さん。そういってすり寄ると、土方さんが紫煙をはき出しながら俺を近藤さんからひっぺがして
「ってお前スカーフもなんもしてねえだろっ。一番ラフな格好しやがってなにいってんだ。」とつっこんでくる。


「なにしやがんでい マヨラーのくせに」「マヨラーがなんの関係があんだよっ」

いつもとかわらない午後。
確かに今日は初夏と思えない位の気温だが、実はそんなに気にならない。もともと汗もかかずあまり気温の変化が気にならない方だ。
でも土方さんがさっきの外泊についての追及を始めるのが怖くて「もっとラフなやつがいいでさあ」と話をつづける。
手持ち無沙汰でシャツをくつろげて風を手で送ると俺のだらしない姿をとがめるように土方さんからじろっとにらまれた。

「総悟。きちんと服着ろ。」
俺が行儀が悪いのはいつものことで気にせず広げたシャツをもて仰いでいると、「総悟!」と土方さんが苦々しい顔で立ち上がり俺の服装を直そうと手を伸ばす。

相変わらずきっちりしてやがるなあ。土方さん。

ふと他の隊士の視線を感じた。俺の空いた胸元をじっとみる目。舐めるような視線。
俺が何気なくそちらを見るとむこうはあわてて目をそらし「し、失礼します」と立ち去った。そらした顔が赤かった。

その瞬間 その視線の中にあった性的な意味がわかり、俺はばっと胸元のシャツをかき集め慌てて肌を隠した。
今までなら気づかなかっただろう視線の意味。でも今俺はわかるようになった。旦那から人肌を教えられ男の欲望がどんなものか教えられたからだ。

「総悟」

なんだかとまどったような土方さんの声。
「おめえ」
土方さんが何を言い出したいのかわからない。でもなんだか不穏な雰囲気を感じて俺は慌ててたちあがった。


「見回りいってきやす!」
「総悟!」

背中から追っかけてくる声を無視して早足に立ち去る。土方さんのもの言いたげな顔。

俺と旦那のことはばれるはずはないのになんだか土方さんにはばれてしまいそうで怖かった。
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