沖田総受1

□無邪気な子供3 シリーズ完結編(完結)
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「はあー朝風呂はいいねえ。」

夜勤明けの朝、誰もいない屯所の風呂場で。

朝いれたばかりだという湯は一緒に夜勤だった一番隊の皆が入った後だというのにかなり熱く疲れた体に心地良かった。

勢いをつけて湯から上がり誰もいないのを幸いに湯船に腰掛けておおきなのびをする。一人きりじゃないとできないことだ。


万事屋から帰ってきてぎょっとしたのは、胸、肩、首・・・体中にあちこちにのこされた旦那からの鮮やかなキスの刻印。

隊服はきっちりスカーフをまけばかろうじて見えないが、風呂場ではそうはいかない。ここ、数日人目を避けて、深夜や早朝に入ることにしていた。

・・・けっこう薄くならないもんだな。

胸に残る跡を指でなぞって、数日前の旦那との事を考える。

俺を和室に連れ込んだ後の旦那は、嵐のように荒々しくて、容赦なく俺を翻弄した。・・・ちょっといつもと違う余裕のない旦那の様子。
事が終わった後の旦那はいつものようになって優しく「ちょっと荒っぽかったね。ごめんね。」と謝ってくれたが・・・。

「なんだったんだろ。」

つぶやいてそれからまた湯船に腰掛けたままのびをする。
朝日を浴びながら肩や濡れた髪から流れて肌をつたう水滴をみてぼんやり「平和だなあ」と考えてた。

と、濡れた髪をかき上げながら、体をひねってふと目を入り口に向けると、いつからいたのか、若い隊士が立って俺をぽかんとみていた。

・・・いつから?やべっ。

とっさに湯船につかってはみたが、距離はあるし、湯気の立ちこもる中、こんな鬱血はわかりゃしないだろという気もして、動揺から立ち直った。

「あんたア、最近入った人だね。
ぽかんと立ってないではいりなせえよ。」

声を掛けると
「は、はいっ!し、失礼します!」
とえらく直立不動で礼をしてなぜか前屈みではいってきた。

「夜勤・・・じゃねえよな。昨日は一番隊だけだったから。朝風呂かい。」
興味があったわけじゃないけれどなんとなく声を掛けてみた。
いつもは人の事なんかきにならねえ俺としてはめずらしいかもしれない。体に残る旦那の跡を見られたかもっていう焦りが俺を饒舌にしたのかもしれねえ。

湯船に浸かって淵に腕を置いて顎を載せた姿勢で話しかけると
ざぶんと湯船に入ってきて
「き、っっきのう夜、風呂に入らずねてしまって!び、ビデオをみてたんですっあの、」
とえらく緊張した様子で返事が返ってきた。

「ふーん・・そうかい」
正直どうでもよくてぼんやりつぶやいていると、
「沖田さん!」
と脱衣所から俺を呼ぶ声がした。

「あ、んじゃあな。ごゆっくり。」
いいきっかけだとそのまま風呂場をでると山崎がたっていた。

「あれえ、何してんでえ」
ちょっと焦ってタオルで体に散らばった跡を隠そうとしたが、山崎は洗面台に置いてある薬用石けんをなぜか凝視してこちらをみやしねえ。

安心して体を拭いて寝間着代わり単を素早く着ると
「夜勤明けですか?」ときいてきた。

「そうでさ。さっき帰ってきたんでい。」
一応単から出ている首もとの鬱血は首にタオルをかけて隠して、「で、なに?」と山崎に問うと
「なんで一番隊のみんなと一緒にお風呂にはいらないんですか?」なんて聞いてきた。

「別に。一人でゆっくり入りたかっただけでい。」
ちょっとぎくっとしながら、髪をごしごしとタオルで拭いて、「用がないなら俺、もう寝るわ。」と山崎の横をすり抜ける。

「沖田さん!」

しつこく廊下を追ってくる山崎の声。
「さっきの隊士しってますか?」
「しらねえよ」
いぶかしくおもって答えると
「彼はちゃんと昨夜風呂にはいってましたよ。」なんていってきた。

「入ってねえとかいってたけど。またはいりたくなったんじゃねえの?」
あの隊士が風呂に何回入ろうと興味のない話だ。ちょっと山崎がうっとうしくなって適当に答えると、
「彼は沖田さんが一人で入る様子をみて慌てて追っていったんですよ。」と返ってきた。

「・・・どういうことでい」
あくびをかみ殺して振り向くと至極真面目な顔した山崎が俺を困ったように見てた。
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