沖田総受1

□休日(完結)
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雑多な雰囲気の適度に小汚くて狭い活気のある居酒屋。
俺は沖田君とカウンターに並んで酒を酌み交わしていた。デートってわけじゃないけど俺たちはちょくちょく食事にいったり、映画にいったり逢瀬を楽しんでいる。

沖田君は大きな捕り物がおわったばかりで明日も非番。
「旦那あ、今から飲みいきませんかあ」っていうお誘いに尻尾をふって俺はやってきた。

「旦那あ、これ、美味しいでさ」
沖田君がほんのり目元を赤らめて筑前煮をつまんでる。少女のような見た目と裏腹に頼むつまみは結構しぶくて、モツ煮、もずく、タタキ、とおっさんのような好みで意外であり、なんとなくドンぴしゃでもあり…。

「どれ?うまい?」と聞くと沖田君は、これでさ、とレンコンをはしでつまんで俺の口元にもってきた。「あーん」ってやつ?

「うまい。」
「ね。」

にこにことわらう沖田君はとてもとても泣く子も黙る真撰組一番隊切り込み隊長とは思えない。

「あーなんだか、酔いましたア」
沖田君が無防備に俺の肩に頭を載せる。
さらさらと薄茶いろの髪が俺の肩に流れる。
「珍しいね。沖田君が酔っちゃうなんて」

こうみえても結構彼はお酒が強い。日本酒をぐいぐい飲んでけろっとしてる。
あんまりこんな風に酔ってはしゃいだ姿を見たことがない。

「旦那と一緒だと思うと安心して…。ちょっと気が抜けたようでさ」

か、かわいいこといって。安心してばっかりだと食われちゃうよ。俺は舌なめずりしてほんのり桜色に頬を染めて潤んだ目の沖田君に見とれた。

「近藤さんと飲むとあっちが先によっちゃうし、隊の連中とのんでも俺は上司だからって気はあるんでさ」
日本酒の入ったおちょこにうす紅色の唇を近づけて言う。

「土方とは?」
俺はあえて聞く。でも聞きたかったから。

「…土方さんと飲んでも、醜態はさらしたくねえって強がっちゃうんでさ。」

それからくりっと大きな目で俺をみてにこりと笑った。
「旦那だったら帰り道に攘夷の奴らに襲われたってまもってくれるんですもんねイ」
といって「意外と強いし」
なんて付け加えた。

「意外とってなんだー銀さんは強いよー。日頃その力をみせないだけだよー」
と俺も酌をされた日本酒を飲んで、沖田君の柔らかい頬をつついてみせた。

「んー」
俺の指をその華奢な手で握って
「旦那の手って大きいねえ」と酔っぱらい特有の脈略のないことを言う。
「あっちもおっきいでしょ。」
「最低だあ」
ごきっと容赦なく指を反対側に向けられた。「痛てええええ!!」


こんな風に無防備に酔って楽しそうな沖田君をみると俺も嬉しくなっちまう。
俺はちゃんと沖田君のよりどころになれているのかな?
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