沖田総受1

□花蘇芳 (完結)
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武州。

まだ俺達が侍として生きる道を模索していたあの時代。


「土方!勝負しろ!」

両手一杯に近藤さんから頼まれていた武具を抱えて歩いていると道場の陰から飛び出してきた総悟に竹刀で頭をばーんとやられた。遠慮無い一撃。

「いてー!このくそ餓鬼!」
荷物を放りなげて追いかけると、
「近藤さーん」
と総悟はいきなり子供めいた声をだして道場の奥の近藤に駆け寄る。チビめ!

「どうした。総悟」
にこにこと笑う近藤さんの腰にだきついて
「こいつが俺をいじめるんでさ」
俺を指さして嘘泣き。

「ってお前がいきなり竹刀で叩いてきたんだろうーが!!」
「まあ、トシ。そう怒んなよ。子供のすることだろーが」
近藤さんの体の陰からあっかんべーする総悟。

ったくこいつはいつもこうだと俺はため息をついた。
なんか妙に俺にばっかりつっかかってくる。チビのくせして剣の切れはかなりのもので、受ける俺は結構なダメージだ。

と言うか・・・。

なんで俺にだけ、かわいくねえの?
そっちのほうがダメージあるんだけど。いやいや、こんなくそ餓鬼べつになついてもらわなくてもいいけどよ。



「これ食うか?総悟」
「わあ。嬉しいでさ」

総悟はにこにことかわいらしい笑顔を振りまいて、道場仲間に頭を撫でてもらっている。
こいつ、絶対わかってやってるよな。自分の可愛さ。

子供特有のなめらかな薔薇色の頬に大きなぱっちりとした目でにっこりと笑うと男所帯に花が咲いたようだ。
ちょくちょく差し入れをもってやってくるミツバもかなり綺麗だが、総悟はなんというか、無邪気な子供らしさとこいつ持ち前の奔放さが相まって目が離せない。


「おい、土方」
いまいましげに総悟をみていたら、くるっと振り向いてえらそうに俺を呼ぶ。

「なーんですか。沖田センパイ」
わざと慇懃無礼に見下ろすとむっとしたように
「今晩の祭り、近藤さんたちと一緒にいくんでい。お前も呼んでやろうかと思ったけどやめた。」
とまた近藤さんにだきついた。


「楽しみだあー近藤さん」
「おお、そうだ。トシ。神社の祭り、一緒にいこうぜ。多い方が楽しいしよ」

近藤さんが猫みてえにすりよってる総悟の頭をくるくると撫でながら俺にいう。
亜麻色の細い髪が柔らかそうでふと触ってみたくなった。

近藤さんが羨まし・・・くは別にねえ。
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