沖田総受1

□総悟君の執事(前)
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「へえ・・・ここ・・・?」

あっけに取られて校舎と併設された寮を眺めた。
鬱蒼とした緑に囲まれた洋風の建物はとても高校の寮に思えない豪奢な作りで、今まで古い平屋の長屋めいた日本家屋で暮らした俺にはとうていなじめない雰囲気だ。

「ま、いいや。」
いけば、俺の世話役だかなんだかの坂田さんと言う人が迎えてくれる手はずになっている。とりあえずたった一つの荷物をもって足を進める。

姉ちゃん、ばあちゃん俺がんばるぜぃ。



たった一人の肉親の姉ちゃんを亡くし、遠縁のばあちゃんに育てられていた俺は、そのばあちゃんが病気であっけなく逝ってしまい、とうとう一人ぼっちになってしまった。
しかしもう一人で働こうと思えば働ける歳だ。そう覚悟していたところに遠縁の遠縁のよくわかんないところからの申し出で俺はこの学校にくることになった。




「あれ?君、沖田君だよね?早いねえ〜。いま、そこまで迎えに行こうとしてたんだけど。」

白い髪の毛の男が寮の大きな開き扉のガラス戸を押して出てきた。
しなやかそうな体格のいい体に黒のスーツをばりっときて、かなりの男前なのになんだかのんびりとした感じの人だ。

「沖田君だね。宜しく。坂田銀時だよ。」
「へえ・・・。」
思ったよりもかなり若い。なんだか独特の彼の雰囲気に押されてちょっととまどったが、
「沖田総悟です。宜しくおねがいしまさ」
と、とりあえずきちんと背を伸ばして丁寧に頭を下げた。


「あ、いいの。堅苦しい事は」
俺の荷物を持ちながら坂田さんは言う。
「俺、沖田くんの執事だから。気楽に何でも言って。」
「ひつじ?」
「しつじ」
めえーと山羊が頭の中で鳴いた。いやそれ山羊。
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