沖田総受1

□総悟君の執事(後)完結。
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「一体・・・『執事』って」
「ん?」

教室の窓から初夏の光を受けて輝く青葉を見ながらつい、言葉が漏れた。

「なに?」
俺の独り言が聞こえたようでこっちをむいて山崎が問う。
今は数学の授業中だ。

「い、いや、な、なんでもねえ」
あわてて取り繕った。

「やっぱり体調わるいんじゃない?今日、途中から来たりしないで一日休めば良かったのに。」
心配してくれる山崎に曖昧に笑ってからとりあえず前の黒板を見るが、全然頭に入ってこない。頭に浮かぶのは・・・。


旦那・・・




昨夜。
南戸とのことで混乱していた俺は旦那の前でずいぶん大胆に振る舞ってしまった。腕の中でひとしきり泣いたのはいいけど、風呂場で・・・。

思い出してかあっと頬が赤くなる。
キス・・・したよな?それから旦那のて、手で・・・。

されたことを思い出していたたまれなくなる。
あの後はよく覚えていない。たぶん緊張の糸が切れてぐったりしてしまったんだろう。
きがつけばバスロープにくるまれてベットに寝ていた。日の光が強く部屋に差し込んでいて朝だということに気がついた。


「起きた?」

俺の起きるのを待っててくれたんだろう、書類を読んでた旦那が顔を上げてにっこり笑った。時計をみたらもう10時だった。

「まだ寝てていいよ。今日は休むように連
絡したから。」
旦那が椅子から立ち上がってベットサイドに腰掛ける。
ふわりといつも旦那がつけているコロンの香り。仕立てのいい黒のスーツのズボンに白いシャツの胸元のボタンをいくつかはずした姿は大人の男の色気が立ち上っていた。

「お、俺・・・」
「ん・・・?なに?」

顔を至近距離でのぞき込まれて低い声で囁かれる。俺を見る目は、優しくて俺はそのとたん昨日のことを思い出したんだ。

「あ、あの・・・」
旦那の前で晒した自分の痴態が頭をよぎる。羞恥に言葉が詰まって言えない。

なんていっていいかわからず下をむいている俺に旦那は、「なに?総悟」甘く囁いてきた。

心臓が飛び跳ねてシーツを握っている手が震えた。
俺をのぞき込む旦那の色気のある目元や筋張った男らしい大きな手が目に飛び込んできて、どぎまぎと動悸が押さえられなくなった。

だ、だめだ!一緒にいられない!

俺は止める旦那と会話もそこそこで逃げるように学校にやってきた。




旦那どう思っただろうか。昨日の俺・・・。

旦那とのキスを思い出す。
甘く切なくて・・・。まるで恋人同士のキスみたいだった。

「恋人」の単語にどきんと胸が高鳴る。
普通執事ってああいうことまでするの?・・・そんなことないよな。いくらなんでも。
旦那は俺のこと・・・どう思ってるんだろうか。ああいうことするくらいなんだから俺の事を・・・。

勝手に都合のいい考えが浮かんでは消え、俺は一人であたふたと自分の妄想にうろたえていた。



チャイムで我に返った。
いつもきちんと取るノートは真っ白だ。

「総悟、やっぱりなんかおかしいよ。具合大丈夫?最初の連絡通り休んどけばよかったのに。」
俺の心配をしてくれる山崎をごまかしつつ次の教室へ向かうため渡り廊下に向かった。

緑に囲まれた中庭を通る通路は風がそよいで気持ちいい。白い綺麗な花が通路沿いに咲いて、心をなごませるが、その白の色に俺はまた、朝から俺の心を占めている白い髪の執事を思い出していた。

・・・帰ってちゃんと昨日のことのお礼を言おう。それから・・・迷惑かけたことも謝って、そ、それから

(またキスされて抱きしめられたい。)

ふと心に浮かび、頬が赤くなるのがわかった。俺は旦那のこと・・・。


   
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