沖田総受1
□第二百五十三訓「人はとじこめられると自分の中の扉が開く」後日談(完結)
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「旦那ァほんとにこんなところにその甘味屋があんですかい?」
隊服の沖田君がいぶかしげに問う。
さぼりの途中の彼と会った俺はこれ幸いと『美味しい店見つけたんだけど』という口実でデートに誘いだした。久しぶりのデート。可愛い俺の恋人よ。とウッキウッキで来たのはいいけれど。
「んー。たぶんこのビルだったと思うんだけどなあ」
正直酔っぱらって深夜にはいった店だから記憶は曖昧だ。昼もやってるっていってたけどなあ。あのショートケーキ丸々一個ぶちこんだ前衛的なパフェをぜひとも沖田君に食べさせたい。しかも今時花火が刺さってパチパチいってんだぜ!
「でもなんか空ビルみてえですが」
たしかに古ぼけた感じで、飲み屋の看板がいくつか下がってはいるが昼間のせいか閑散としている。
エレベーターのボタンを押して乗り込む。
「まちがえたみてえ。一応いってみっか。」
うろ覚えの階数を押すとガッックンという感じでエレベーターが動き出した。
ウ、ウイイイイイン・・・・
なんだか今時息も絶え絶えの巻き上げ音を聞きながらちょっと不安になった。
なんだかな・・・・。
「どうしたんですかい?」沖田君が見上げる。
「いやー銀さんさあ、最近新八と神楽でエレベーター閉じこめられっちゃってさ。」
いや、あんときはひどい目にあった。そういうと
「ひどい目に会ったのはメガネでしょ。根暗なマジカルバナナさせたくせに。」
「お、詳しいね。」
「メガネがこぼしてました。絶対誰かの日頃の行いがわるいんだって。三人でいるといっつもトラブルにまきこまれるから。」
沖田君がそう言った途端。
がくんとエレベーターが止まった。
・・・あれ?
「・・・・・・これって絶対旦那の行いが悪いんでさぁ。」
そういって沖田君がじろりと俺を見た。
あれ?俺?俺のせい?
そういうわけで俺たちはエレベーターに閉じこめられたのだった。