基本銀新2

□秘色色の空(完結)
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いきなりドアを開けた途端抱きすくめられた。

「あ…銀さん!」
そのまま唇を奪われて、ずるずると狭いアパートの玄関に押し倒される。

「ちょっと!銀さん、え、なに、まって…」











3月下旬にこのアパートに引越しをして、4月から大学生活として新生活をむかえた僕だった。

去年の2月。ひやひやした二次もなんとかクリアーして前期試験で合格通知を手にした僕は銀さんに抱きついて泣いて喜んだ。

そして自分が考えていた以上に自分はこの大学、この学部に行きたかったのだと気がついた。

県外に行くことを躊躇して地元の文系学部の大学に進学を決めようとしていた自分。

その安易さを叱って背中を押してくれた銀さんに本当に感謝をした。


当然土方さんも伊東さんも合格だ。一足早く推薦で大学が決まっていた沖田さんもいるし、知らない土地に一人暮らしだといってもあまり不安はない。車で二時間走れば銀さんや姉さんのところに帰ってこれる。


それでも銀さんに会えない寂しさは消すことが出来なかった。

ばたばたと一人暮らしをはじめてまだ3週間。結構忙しく毎日が過ぎていく。
寂しがっている暇はないのに、会いたくてたまらなかった。


『今日出張でしょ?ちゃんと起きました?』
『朝起こしましょうか?』
『今日の飲み会飲みすぎたらいけませんよ。ウコン飲んでくださいね』
『店屋物ばかりとっちゃだめですよ。少しは野菜を』

僕が銀さんに送ったメールをみて沖田さんは『おめーは母ちゃんかあ』と笑う。

『もうご飯たべましたか?』

金曜の夜、一人分の簡単な夕食を取った後、ふと銀さんにメールを送ると
『食べた。昨日な』
なんてかえってきて慌てて電話した。


「しっかり食べてくださいよ!」
『いやー昨日飲みすぎて今日食欲ねえで』
受話器の向こうの暢気な声。相変わらずの銀さんだ。
だいたい銀さんとあの料理能力の姉さんでどういう食事を取ってるんだか…


「来月のGWには帰ります。待っててくださいね」そう思いをこめていうと
『早く帰れ。抱きてえ』なんて低い声で囁かれて赤面した。

「な、なにいって…」
『なんだ?パチは抱かれたくねえの?』
「い、いや…そ、それは…勿論…」
なんて言葉を濁してると

『一人暮らしだろ?一人でしてんだろ』
なんてイヤらしい話に持っていかれた。
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