沖田総受4

□チョコブラウニー(完結)
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「あの書類出したか?」

指示したのは先週だ。なのに部下は「あ!ああ!す、すいません!すぐ」なんてかましやがる。

俺の眉が寄ったのをみてとったのか慌てたようにデスクに飛んで行ってパソコンを開いた。…なんで今頃とりかかる?いらいらと俺は立ち上がると、びくんと相手が飛び上がるように「す、すぐ!あの直ぐできます!」と慌てふためいて言った。

「…すぐできるもんなら早めにしとけ」
「は、はい!」

ここで怒鳴り散らすほど人間ができてないわけじゃない。ていうか俺はほとんど怒ったことがないのだが、なんでもう相手がびくびくすんだろうな。
大体怖がってるならすぐ仕事しやがれ。仕事で優先順位をつけられねえやつは使えねえんだよ。


サーバーでコーヒーを入れて一息。
煙草でも吸いに出ようかと思っていると「あの、土方さん」なんて部署の若い女の子が声を掛けてきた。


「これ、あの作ったんですけど…よかったらコーヒーと一緒に」
三時のおやつか?どうしてこう女子は菓子を食いたがるんだろう。

妙にごてごてと紙のレースに包まれた菓子。茶色い棒みてえなものがごろごろ。
色からしてチョコレート系か?正直甘いもんは苦手だ。それでも断らずに食うのが中間管理職ってもんだろう。

「ああ。少しだけ」そう言うとぱっと相手の顔が明るくなる。

「う、嬉しいです!」
菓子に刺さっていたこれまた妙にごてごてとしたスティックで一口食べる。

う。甘い。思わず眉が寄りそうになったが、じっと俺を見上げる女子職員の手前だまって咀嚼した。

「あ?胡桃?」
「そうなんです!ブラウニーなんですけどナッツをたっぷり」


…総悟が好きそうだな。
そう思ってじっと菓子を見つめる。

「気に入ってくださいました!?」

相手の声が嬉しそうに弾んだ。

「あ、あのよかったらこれ…持ってかえって召し上がってください」
ごてごてと飾られた箱ごと渡された。

「皆で食うんじゃねえのか?」
そう聞いたが相手は頬を上気させて「い、いいえ」なんてひたすら俺に菓子を押し付ける。

「土方さんが食べてくださったら嬉しいです…」
「そうか。サンキュ」


俺が笑うと相手がぼうっと見上げてきた。

「また…作ってきていいですか?」
俺は黙ってコーヒーを飲む。

聞こえないふりしてさりげなく
「あ?何か言ったか?」
「い、いいえ!なんでもありません!すいません!」
うまい具合に撃退できた。

…ああ、女ってめんどくせえな。

ちなみに俺が安易に菓子をもらったせいで、このあと勘違いした女子社員からひたすら菓子のプレゼントをもらうハメになるのだが。

まあ、そんなことはどうでもよかった。





きっと総悟が好きだな。これ。


そんなことしか考えてなかった。
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