沖田総受4
□移り香2(完結)
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夏の夜。
むうっと蒸し暑さが不快な夜半すぎ、土方は仕事の手をとめた。時計をみればもう12時を過ぎていた。ため息一つ。やってもやっても仕事がおわらないのはともかくこの暑さは不快だった。
着流しの間にぐいっとタオルをつっこんで汗を拭き、ひとっぷろ浴びようと立ち上がった。水でも被ればすっきりするかもしれない。
寝静まった屯所の廊下に人影がみえてぎくりとした。
廊下を歩いてくる見慣れた姿。
「…どうした?どっか行ってたのか」
「土方さん」
どこかうろたえたような返事が返ってきた。
沖田だった。
私服姿で今帰ってきたような格好。いつもきちんと着ている袴姿がどこか乱れているような気がするのは気のせいか。
「もう夜中だぞ。一体どこに」
「寝やす」
話を断ち切って沖田が背中を向ける。
「おい、ちょっと待て」
手を伸ばして土方は沖田の肩を掴んだ。
こんな夜中に仕事でもなくてなにしてんだ?そりゃ、コイツのプライベートかもしれねえが、俺は上司である前にコイツの保護者で…
「一体どこに」
土方の声が止まる。振り返った沖田から石鹸の香りがしたからだ。
この暑さの中?たった今帰ってきたコイツが?
「……女か?」
問われて沖田が目をそらした。白いうなじがやけに土方の目を射た。
「おい、一体いつのまに」
「うるせえよ。アンタに関係ねえだろ」
勢いよく手を振り払われた。
「干渉しねえでくだせえ」
ふいっと視線をそらした。そのまま土方を無視して踵を返して部屋へ向かう。
………まじかよ。
土方は沖田に女がいるという事実にちょっと驚いたままその後姿を見送った。