沖田総受2
□七日月(完結)
1ページ/11ページ
遅めの警邏を終えて(つーてもほとんどさぼっていたけど。)、帰り道旦那とあって、居酒屋で一杯。
「沖田君、未成年でしょー」なんていいながらも土方さんみてえにうるさいこと言わずに酒をのませてくれる旦那と盛り上がっていたら携帯がなった。土方さんだ。
「そろそろ帰りまさ。」
そういって立つと
「あ、俺も。」
と旦那も立ち上がる。
一緒に暖簾をくぐるともうあたりはすっかり暗くなっていた。今日は上限の月。七日月か。夏の夜風が気持ちいい。
「沖田君ってさ」
屯所の近くで旦那が別れ際に言う。気がつくと旦那は俺につきあって遠回りしてくれたようだ。
「土方とつきあってんの?」
「は?俺?」
思わず足が止まった。
「つきあうの意味わかんね。旦那。」
俺男ですぜい。
「だって、いっつも土方のヤロー気にしてるじゃねえか」
頭一つ分高い旦那から顔をのぞき込まれた。
「俺の保護者みてえな気持ちじゃねえんですかい?確かにうるせーけど。そんな不気味な関係じゃあありやせんぜ。」
そういって何でもなく見えるよう俺は笑った。うまく切り返せたとは思う。
俺と土方さんがそういう関係になってかなりたつ。きっかけは何となくだったけれど、あれを「つきあってる」と言うんだろうか。
甘い言葉を囁き合うような仲じゃねえけど、俺たちの関係はたんなる「お遊び」みてえなもんとは違うと俺は思ってる。
「俺と土方とかありえねーでしょー」
そういうと「そーう?」なんて旦那が頭を掻く。
土方さんとの関係を吹聴してまわるほど俺は恥知らずじゃねえ。っていうか誰にも知られたくはねえ。
疑わしげな旦那の視線。このお人は結構鋭いから嫌になる。
「やめてくだせえ。男同士で。ぞっとしまさあ。」
ちょっと強く言いすぎたか。逆におかしいか。
土方さんはまあいい。男色趣味だってアリなこのご時世だ。色男の余技みてえなもんだろう。
でも、俺が、泣く子も黙る真撰組一番隊長のこの俺が女のように土方さんに抱かれてしかもそれを悦んでるなんてこたあ、誰にも誰にも知られたくはない。
「ぞっとするねえ…」
旦那はそう呟いた。
それからふいに唇に落ちる柔らかく温かい感触。
突っ立ったまま俺が目を見開くと旦那はゆっくり俺から顔を離し、
「ぞっとした?」
なんて笑う。
「なんてことするんですかい」
俺は口を手のひらでぬぐいながら言うと
「ちょっと拭き取るとかひどくね?」
なんて言いながらも俺の頭をぽんぽんと撫でる。
その犬や猫相手にするような色っぽい雰囲気を全く含まない仕草にちょっとほっとした。
「酔っぱらいですかい。」
そういって屯所にむかって歩きだす。
「んーまあね。また一緒に飲もうね。沖田君。」
旦那が分かれ道で手をふった。