沖田総受2

□次の朝にはA(完結)
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ひゅっと竹刀が走った。
ばしりと重い音がして、隊士の手から竹刀が落ちた。上がるどよめき。
うわずった声で審判が勝敗をつげた。
「一本!沖田隊長!」
眉一本もうごかさない涼しげな総悟の顔。


秋風がふきはじめた昼下がり。

9月といえども相変わらず連日の夏めいた暑苦しさだが、ときおりこんな涼しい風がふく日もある。
しかし道場の中は集まった人の熱気でむせかえるようだった。



月いちくらいで隊ごとにやってる稽古試合でそんな大々的なものではない。しかし今日は一番隊だ。
精鋭一番隊のメンバーが腕をふるうとならば、自然と人垣ができてくる。

俺は腕組みして道場の壁にもたれて戦う総悟をじっとみつめた。


ーーーどいつらも、鮮やかな剣さばきだ。
血にまみれた実戦の中で掴んでいった迷いのない力強い剣。
しかし総悟はその強豪たちを難なくなぎ倒し、指導までしてく余裕すらある。



すらっと立ったその後ろ姿にはなんの力も入ってない。竹刀を持つ腕の動きも自然でしなやかな力に満ちている。
見とれるくらい綺麗だった。

入隊してきた奴らは総悟の若さと外見に最初驚く。中には七光りじゃねえかと軽んじるヤツもいる。

しかし剣を握る総悟の姿をみて、もう四の五の言うやつはいねえ。

一番隊の切り込み隊長は沖田総悟しかいねえ。

俺は誇らしい気持ちと同時に俺の腕を必要としない総悟に複雑な思いを抱いて総悟を見ていた。


「さすがだなあ。沖田隊長」
「かっこいいー」
うっとりしたような外野の声。

「すげえよな。あの剣さばき。」
「でもかわいいなあ…」
「あの細腰…」

ーーああ?なんだ最後の感想は?
小さい声だがしっかり聞こえたぞ。

ぎろりとにらむと私語を注意されたと勘違いした隊士たちが青い顔してさっと黙った。
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